「日米開戦」に反対の山本五十六が肌身で感じていた、日本が総力戦で【必敗する】具体的な根拠

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しかし、陸軍の日独伊三国同盟に海軍省の三羽烏が反対している。特に山本五十六はそのスポークスマンとして新聞記者に海軍の主張を吹き込んでいる。好き勝手にさせてはいけない。これが陸軍の総意だった。

「あそこと、あそこを見てごらん、犬が吠えているよ」

結局、頻繁に起こる殺害予告や、「辞職勧告」の連判状や運動に、五十六も憲兵をつけることを覚悟した。ただし、五十六は、殺害予告や「五十六は売国奴だ! 海軍をやめろ」運動のバックに陸軍がいることはわかっていた。だからこそ、憲兵を近辺に寄せ付けたくはなかったが、逆に開き直った。

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この当時、天皇陛下は、「排英運動を何とか取り締まることはできないか」と、首相である平沼騏一郎に尋ねている。陛下は皇太子時代にロンドンに外遊したことがあり、イギリスの王室には親近感を持っていた。

陛下のご下問に平沼は「取り締まりにくい」ことを伝えた。平沼は内務大臣の木戸幸一から「実は、陸軍が金を出し、憲兵が先に立ってやるんで、とても歯が立たない」と報告を受けていたからだ。いつの時代でも、極端に跳ねる運動家にはバックがいることが多い。

五十六の次官室に、近親者が訪ねてきたことがある。「窓の外がうるさいね」と近親者が五十六に質問すると、五十六は答えた。「あそこと、あそこを見てごらん、犬が吠えているよ」と言ったという。犬とは憲兵のことだ。

それでも、五十六は、そっと次官室を抜け出し、知人のところに行って、麻雀を楽しんだという。これは、五十六らしいカムフラージュだろう。

憲兵が尾行していることを知って、わざわざ麻雀をしに行ったに違いない。五十六の賭け事好きは、この当時知れ渡っていたし、麻雀なら誰にも会える。なかには、本当に麻雀を楽しんだだろうが、時には、憲兵にわからない符号でメッセージを送ったかもしれない。

別冊宝島編集部
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