じりじりと上がる「長期金利」は危険信号か? "金利復活"で高まる【債券市場】ならではのリスク
ですが、多くの金融機関が同じように大量に債券を保有し、同じようにVaRによるリスク管理を導入しているときに、理由が何であれ大きな価格下落が起きると、みなが一斉にリスクを削減するために保有している債券を売ろうとするので、市場は売り手一色になってさらに大きく価格が下がっていくのです。
それがまた推定損失の計算値を引き上げ、さらなる一斉売りを誘発するという具合に悪循環が発生します。
金利の復活で高まる「債券市場」ならではのリスク
VaRという専門的で、当時は目新しかった概念がこの事例の呼び名に使われていますが、市場参加者のリスク削減行為が一斉に行われることで相場が一気に大きく下がるというのは、実は昔からよくある暴落の基本パターンです。
結局、VaRという個別金融機関にとっては最適にみえる高度なリスク管理手法を導入したところで、だからといって市場の暴落を防げるわけではなく、それどころか、それが暴落を誘発する要因にすらなってしまったということになります。
その後日本は、金利が緩やかにしか動かず、ほとんどニュースにもならないという時代を長く経験してきました。しかし2022年にほぼゼロ近辺だった長期金利は、ついに大きく動き始め、2025年前半には一時1.5%を超える水準にまで上昇してきています。
ゆっくりと時間をかけての変動であったため、いまのところパニックを引き起こすような事態には至っていませんが、久しぶりに債券市場の動向に関心が集まる状況が訪れたといえるでしょう。
ここまでみてきたように、債券市場は株式市場ほど大きな価格変動が頻繁に起きるわけではないのですが、ひとたび大きな変動が起きると、市場規模が巨大であるがゆえに大きなショックを生む可能性があります。
金利の復活が叫ばれるいま、その動向に注意を向ける必要性は、一層高まってきているといえるでしょう。
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