じりじりと上がる「長期金利」は危険信号か? "金利復活"で高まる【債券市場】ならではのリスク

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ただし、りそな銀行の実質国有化によって不良債権問題に一応のめどがつき、景況感が改善し始めると、反動が生じます。

行き過ぎた相場には必ず反動が生じますが、大勢の市場参加者が同じ方向の取引を大きく積み上げていると、その反動はより大きくなります。このときは銀行の多くが多額の余剰資金を債券で運用しており、価格の下落で一斉に慌てて売りたてたために、債券価格の一層の急落が生じたのです。

2003年の9月までに利回りは1.6%を超え、上昇幅はおよそ1.2%となりました。これが「VaR(バー)ショック」と呼ばれているものです(下図参照)。

(日本10年物国債の利回り推移、出所:『教養としての「債券」』より)

VaRというのはバリュー・アット・リスクという言葉の略称で、金融機関で用いられているリスクの測定手法のことです。

自行で保有している債券などの保有量に、推定される価格変動幅を掛けて、最悪のケースでどのくらいの損失が発生するかを計算したものです。

これを一定限度内に抑えることで、相場が悪い方向に動いたときにでも経営に大きなダメージを与えるような巨額損失の発生を回避しようとします。

リスク管理の定石が生み出す「悪循環」

ところが、市場が大きく変動し始めると、推定される価格変動幅も大きくなり、推定損失額であるVaRも膨らんでいきます。そこで膨らんだVaRを抑えるために、保有している債券の売却を迫られます。

これら一連の流れは、ある意味リスク管理の定石であり、個々の金融機関の行動としては間違ったものではありません。

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