「飛び散ったガラス」の横に息絶えた人…事件か病死か。1600体の遺体と対面した元検視官が明かす「死の謎」を解く思考プロセス

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倒れた人形
死者は何らかの謎を残していることが多く、検視官はその謎を解かなければならない(写真:yuuno177/PIXTA)
検視官として勤務するなかで驚いたのは、ニュースになるような犯罪死体よりも、変死事案が多いこと。さらに驚いたのは、腐敗遺体の多さでした――。
年間160万人が亡くなる「多死社会」日本で、いま何が起きているのか。3年間で約1600体の遺体と対面してきた元・検視官が、「普通の人」の死のリアルを語る。
(山形真紀著『検視官の現場――遺体が語る多死社会・日本のリアル』より一部抜粋・編集。全3回の2回目)

飛び散ったガラスの破片

夕暮れ時、安否確認の通報から遺体発見という一報が入りました。

別居の親族から警察に「60歳代の兄と数日連絡が取れないので、安否を確認してほしい」と通報があり、警察官が現場に向かい、消防とともに室内を確認したところ遺体を見つけたとのことです。

私たちは別の検視をしていたので、この変死事案の環境捜査を署員に任せていたところ、検視責任者から連絡が入りました。

「補佐、警察官が現場に着いた時には玄関の鍵は閉まっていたのですが、屋内の部屋を仕切るガラス引き戸が割れているんです」「……それで?」「……どうなんでしょう?」。なんだか心配そうな声です。

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