東大病院の医師逮捕で明るみになる「医療機器メーカー」の不正の"深層"――いまだ存在する「自由に使える」奨学寄付金と企業と大学の構造汚染

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21年から24年にかけて、同院の整形外科医2名が、JMDM社の医療機器を優先的に使用する見返りとして、営業担当者らから約58万円を受け取った。このときの同社の捜査の最中に、東大病院での汚職疑惑が発覚した。

近年、警察は医療機器メーカーの贈収賄に注目している。筆者が理事長を務める医療ガバナンス研究所は、製薬マネーデータベース「YEN FOR DOCS」を運営していることから、警察から問い合わせを受けることがある。

変わる製薬企業と変わらないメーカー

摘発は、今に始まった話ではない。

23年6月には奈良県大和高田市立病院の眼科医が書類送検された。眼科医は白内障手術でスター・ジャパンのレンズを使う見返りに80万円を受領したとされた。同社の社員5人も贈賄容疑で書類送検されている。

23年9月には、国立がん研究センター東病院の内科医が収賄容疑で逮捕された。胆道ステントを製造販売するゼオンメディカルが、自社製ステントの採用拡大を狙って、担当医に講演料などの名目で継続的に金銭を提供していたという。

なぜ、警察は医療機器メーカーを立件するのか。製薬企業社員によると、それは製薬企業が「不正な販促を止めたから」だ。

きっかけは、12年に露顕したノバルティスファーマの臨床研究不正事件である。大学の研究員に身分を隠して統計解析に関与した社員が降圧効果を改竄(かいざん)。さらに組織だって論文を販促資料として利用していたことが発覚。同社は14年に薬事法違反(誇大広告)で刑事告発されている。

以降、製薬企業は再発防止に力を注ぐ。業界団体である日本製薬工業協会(製薬協)の加盟社は、透明性ガイドラインに基づき、医師への支払いを個別医師名レベルで公開するようになった。

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