226個のブロックは神戸へ、建物は淡路島へ──万博パビリオンが挑んだ「解体なき未来」の現在地

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「リサイクルはかなり発達している」「ただ、建築的な部分でのハードルが非常に高い」。建物を建てる際の行政届け出で、機能的に同じ構造体として成り立たせるのは難しい。「有価物として認識されたものが、廃材として認識されると再活用できないという法律がある」。

産業廃棄物の商流に入ると再活用できない。これは安全面を担保するための制度だ。地震のないヨーロッパと地震のある日本では事情が違う。「完全な実現に向けては、慎重な検討が必要」という。

ルクセンブルクパビリオンの取り組みは、こうした制約の中で実現した数少ない成功例だ。最初から再利用できることを念頭に規格設計を行っていた。船場がリユースコンサルティングとして関わることで、「どの部材をどのくらいであれば国内リユースできるか」を検討した結果だった。

モノを超えた万博のレガシー

サーキュラーエコノミーの理念と日本の建築基準・廃棄物処理法のはざまで、万博は実験場だった。ルクセンブルクやパソナの建材リユース、EUの徹底した循環計画は、制約の中での挑戦を示した。

閉幕しても万博のレガシーはあらゆる形で残っていく(筆者撮影)

ただ、万博が社会に残す本質的な価値は、目に見えない変化にある。EARTH MARTが生んだ異分野融合のコミュニティ、バルト館が問いかけた「自分の後に何を残すか」という意識、NTTが描く未来通信への布石。パソナの広報担当者が語った「人の意識と行動の変化を生み出すこと」。これこそが、半年間の一時的なイベントが社会に働きかける力だ。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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