226個のブロックは神戸へ、建物は淡路島へ──万博パビリオンが挑んだ「解体なき未来」の現在地

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象徴的なレガシーが「万博漬け」だ。パビリオン内で約1トンの南高梅を塩漬けし、来館者には2050年に梅干しを受け取れる引換券を配布した。梅干しの管理を担うのが、和歌山県の田辺市とみなべ市の梅事業者が集まった紀州梅の会だ。事務局は田辺市役所内にある。万博終了後、梅は熊野本宮大社でご祈祷を受けた後、紀州梅の会が2050年まで保管する。来館者が書いた絵馬カードも一緒に保管される。「25年越しの事業は行政が入っていた方が安心」とオレンジアンドパートナーズの萩尾友樹副社長は語る。

プロデュースを担当したオレンジアンドパートナーズは、万博終了後も「EARTH MART」の商標を譲り受ける予定だ。大きな構想が「食のミュージアム」の全国展開だ。総合プロデューサーを務めた小山薫堂氏が主導し、各地域の風土や歴史になぞらえた「食を通して地域を考える」拠点を、地方自治体と一緒に作る計画だ。

構想では、地方自治体の遊休地や遊休施設をリノベーションし、産業・観光・食文化・教育が連携する場を作る。生産者、料理人、食品メーカー、研究者、スタートアップなど普段は交流機会の少ない人たちが集まり、化学反応を起こす拠点を目指す。運営主体は地方自治体を想定し、チケット収入、物販、飲食など民間も巻き込み収益性を持つビジネスモデルを作る方針だ。

EARTH MART
EARTH MARTはスーパーマーケットを模した空間が特徴だった。目玉焼き型ベンチや卵のオブジェも閉幕後ミャク市!に出品された(筆者撮影)

「日本人で日本の食文化を海外の方にちゃんと背景を含めて説明できる人は非常に少ない」と萩尾副社長は言う。「世界中の人が日本の食に興味があるのに、このギャップを埋めるきっかけになれば」。伝統と革新、異分野が相互理解した上で前に進む姿を示したEARTH MARTの成功例を、地域単位で広げる構想が動き出した。

技術のレガシーを残すNTT

NTT Pavilionは外観の一部である布部分の保存を検討している。移設は行わない。鉄骨などの部材はリユース・リサイクルする。布は土に還る原料を使っており、環境に配慮した処理ができる。

NTT Pavilion
NTT Pavilion。カーボンファイバーワイヤーを多用することで鋼材を削減する特別な工法で建築されていた(筆者撮影)

展示コンテンツは展示会や事業会社の展示場で再利用を検討している。NTTの佐藤孝一氏は「1970年のワイヤレス電話のように未来の通信の可能性を今回の孝博で提示した」と語る。「将来、人間の感覚すべてを伝送できるような通信ができるようになったときに、2025年のNTTパビリオンがその始まりだったと記憶されるよう研究、開発を進めていきたい」。

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