海外客の言葉「源泉かけ流しはもったいない」に衝撃…なぜ私たちは「かけ流し信仰」を抱くのか?人気温泉地で"湯の当たり前"が揺らぐ瞬間
それでも、「循環ろ過=人工」「かけ流し=自然」というイメージは、今も根強く残っている。それぞれの管理方法を知ると、どちらが本物かという議論そのものに違和感を覚えるようになった。
自然の力を人工エネルギーで冷ますという矛盾
温泉は、地球の熱エネルギーそのものだ。地中深くの岩盤が熱で温められ、湧き出してくるその湯は、まさに「自然の恵み」と呼ぶにふさわしい。
高温の源泉をもつ嬉野温泉の大浴場で「源泉100%かけ流し」を実現するためには、熱交換器が必要だ。熱交換器とは、源泉の熱を別の水に移して冷ますための装置であり、高温の源泉を人が入れる40度前後に整える。
熱交換器を動かすには、ポンプやモーターを回し続けるために膨大な電力が必要だ。つまりは、自然のエネルギーで温まったお湯を、人工の電気で冷ましている。「自然の恵み」を人工の力で打ち消していると言ってもいいだろう。嬉野温泉の大浴場で「源泉100%かけ流し」をやろうとすると、そんな矛盾を生んでしまう可能性が高くなるのだ。
温泉には「自然の恵み」というイメージが強くあるものの、実際の浴場は人の手が入らないと成り立たない。ポンプも電気も使うし、設備の維持にも燃料が要る。温泉は“自然がくれた湯”であると同時に“人が維持している湯”でもある。どんなに自然の力を借りても、その力を生かすためにはエネルギーと労力が必要になる。ロマンだけではなく、その現実を知る人が、もう少しいてもいいのではないだろうか。
私は完全な理解をしないままに「源泉100%かけ流し」を求め続けていた。北川さんはこう語る。
「旅館大村屋では、大浴場の内湯は循環ろ過式です。貸切風呂や大浴場の半露天は源泉かけ流し。大きい浴槽と、小さい浴槽で使い分けているんです。それぞれに向き不向きがあって、どちらが上とか下とかではありません。大事なのはお湯の使い方なんです」



















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