海外客の言葉「源泉かけ流しはもったいない」に衝撃…なぜ私たちは「かけ流し信仰」を抱くのか?人気温泉地で"湯の当たり前"が揺らぐ瞬間
“源泉かけ流し”と対の存在として語られるのが、「循環ろ過式」だ。名前の響きから「人工的」「再利用」「安っぽい」といった印象を抱く人も多い。そのため、大々的に謳われることはまずないものの、実際には多くの温泉施設がこの方式を採用している。
循環ろ過式とは、浴槽のお湯をポンプで外へくみ出し、ろ過装置で汚れを取り除いて再び浴槽へ戻す仕組みのことだ。温泉法の定義では「かけ流し」ではないが、温泉成分そのものを循環させて再利用しているため、れっきとした温泉である。
北川さんは、こう説明する。
「循環って、言葉の響きで悪いイメージを持たれがちですけど、お湯をきれいに保てるし、温度も一定にできる。大浴場みたいに人が多い場所では、衛生面でも安心なんです」
高温の源泉地の大浴場で最も合理的なのが循環ろ過式
浴槽が大きいほど、お湯の入れ替えに必要な量も増える。そのため、かけ流しで運用すると湯量が増えるだけでなく、加水をせずに源泉を冷ますための熱交換器にも多くの電力がかかってしまう。一方、循環ろ過式ではろ過したお湯に、新しい高温の源泉を少しずつ加えることで、清潔で快適な温度を保てる。嬉野温泉のような高温の源泉地の大浴場では、循環ろ過式が実は最も合理的なのだ。
高温の源泉でも、小さな浴槽であれば、プロの技術は必要なものの、熱交換器を使わずに温度管理することは可能だ。たとえば、事前に高温の源泉を貯め、一定期間放置することでお湯を冷ますという方法をとることがある。また、温泉が通るパイプの距離で温度をコントロールしてる旅館もある。直線で引けば熱いまま、蛇行させるとちょうど良くなる。ただ、どちらも感覚の世界であり、大浴場の大きな浴槽で活用するのは難しい。
循環ろ過式は、省エネで湯を長持ちさせる仕組みであり、水質検査の管理もしやすい。逆に源泉かけ流しの大浴場では、湯が滞留してしまえば雑菌の繁殖リスクも高まる。循環ろ過式は、浴槽の中からお湯を排出して濾過していくため、浴槽内の皮脂や髪の毛も取り除くが、かけ流しの場合はそういった汚れが滞留しやすくなる。「自然」にこだわるあまり、むしろ不衛生になってしまうデメリットがあるのだ。



















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