(第47回)若い地元企業が中国経済を変える

以上見たのは、いずれも設立以来日が浅い若い企業で、トップが明確な経営指針でリードしている。現在の日本企業が老害で硬直化し、漂流しているのと、大きく違う。

中国に進出しようとする日本企業は、中国企業の実力を、技術面でも経営面でも、過小評価しているのではないだろうか? その結果、「先進国企業で中国市場を分け合える」という19世紀の「列強の中国分割」的錯覚に陥っているのではないだろうか? われわれが本当に心配すべきことは、日本企業が中国市場で利益を上げられるかどうかではなく、「日本国内市場が中国企業によって席巻されるのをいかに防ぐか」ではないかと思う。

もちろん、中国企業に問題がないわけではない。比亜迪汽車の11年上半期の純利益は、前年同期比で約9割下がり、同社は経営危機に陥っていると報道されている。拡張戦略が裏目にでたのかもしれない。

より本質的な問題は、民間企業の成長と共産党の理念の整合性だ。

秋の共産党大会では、三一集団の梁穏根理事長が共産党中央委員に選出される見通しと報道された。彼は農家出身の56歳で、今年の中国富豪ランキングで第1位に選ばれた。彼が保有する700億元の資産と共産党の理念は相いれない。

企業が政府に取り込まれれば、経営の自由度を失う。企業はいずれ民主化を求めるだろう。

80年代末にソ連が崩壊し、東ヨーロッパで社会主義諸国が崩壊した時、中国共産党は生き延びた。10、11年のジャスミン革命にも中国共産党は揺るがなかった。経済成長が続き、人々の生活が豊かになっていく限り、「下から」の民主化は起きないだろう。しかし、民間企業家が力をつければ、事態は変わる。中国は「上から」民主化されるのかもしれない。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年5月19日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。タイトル横写真撮影:今祥雄
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