「すきやばし次郎」の創業者で100歳のすし職人・小野二郎さん、これまでの軌跡やすしへのこだわり、すしを取り巻く環境の変化について語る
軍艦巻きなどに使うノリも店で炭火を使ってあぶることで、うまみや香りが出るとともに、口溶けもよくなり、すし種や酢飯とともに消えていく。
二郎さんは「今、食べ物ってみんな見てくれを良くするために考えている。私は見てくれよりは味を良くするために一生懸命頑張ってきた。食べ物ってね、味をよくしないと何にもならないと思うんです」と味わいへのこだわりを話す。
すしは酢飯の上にすし種がのったシンプルな料理なので工夫の余地は多くない。ただ、「父はどうしたらおいしくなるのかというアイデアがぽんぽんと出てくるのがすごい」と禎一さん。「すしが好きで、(すし職人に)なったんですね。やっぱり楽しくやってましたよ。(どうやったらおいしくなるか)それだけを考えてやってきた。俺が変えたというのは結構あるんじゃないかな」と二郎さんは笑う。
アイデアの一つとして挙げるのが、タコ。二郎さんは、「昔はタコなんてどこでもゆでるだけだったが、うちは1時間ぐらいもんでいる」と強調する。タコの繊維を切るようにもむと、軟らかくなり、香りが出る。食べる時にサクっと歯が入るようにもみ込むのに1時間ぐらいかかるという。フランス料理の巨匠ジョエル・ロブション氏(2018年死去)は早くから二郎さんのそうしたアイデアに魅了された一人だ。ロブション氏はタコ嫌いだったが、スペインなどで食べたタコとは全然違うと喜び、二郎さんのタコを絶賛した。
こうした技術を二郎さんは、「すきやばし次郎 旬を握る」(文芸春秋、1997年)などの書籍で惜しみなく披露してきた。禎一さんは「父が残した技術を伝える意味がある。ただ、本当に手間がかかるから、まねしたくてもできないという店も多いのでは」と話す。
おの・じろう 1925年、静岡県生まれ。65年に「すきやばし次郎」を開店。2005年に「現代の名工」に選ばれる。ミシュランガイド東京版では、08年版から12年連続で最高評価の三つ星を獲得。11年にドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」に出演。14年に黄綬褒章を受章。
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