10年の休止を経て…アニメ《ドラえもん》が「フランス」に再上陸!配信先に「YouTube」を選んだテレビ朝日の"深謀遠慮"とは?

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のび太役のルコルディエ氏もキャラクターへの愛情たっぷりです。「どんな間違いをしても、ドラえもんのおかげでのび太は好奇心旺盛でいられる。彼の存在がのび太を成長させるんだと思う」と語ってくれました。

新しい声で命を吹き込まれたフランス版『ドラえもん』は、単なる翻訳にとどまらず、“友情”という普遍的なテーマを、いまの子どもたちの心にどう届けるかを模索する試みでもあります。

どら焼きを食べる2人
ドラえもん役のエマニュエル・キュルティル氏(右)とのび太役のブリジット・ルコルディエ氏(筆者撮影)

「YouTubeはもはやテレビだ」

今年のMIPCOMカンヌでは、「YouTubeはもはやテレビだ」というフレーズが繰り返されました。

ニューヨーク拠点のメディアアナリスト、エヴァン・シャピロ氏は「YouTubeやTikTokなどの個人クリエイター発信の動画が、既存のテレビと同じ土俵で視聴を取り合っている」と指摘しています。さらに、イギリスの調査会社アンペア・アナリシスのガイ・ビッソン氏も、「番組の届け方は結局、ストリーミングに集約していく」と分析していました。

つまり、放送かネットかという区別よりも、視聴者がどのプラットフォームで作品に出会うかが勝負の時代になっているのです。『ドラえもん』のYouTube戦略は、まさにその潮流に乗った動きでした。

YouTubeという自社で完全にはコントロールできない場にあえて踏み出し、自分たちの手で発信することで、“IPオーナーが視聴者と直接つながる力を取り戻した”といえるでしょう。

『ドラえもん』のように長年愛されてきたキャラクターだからこそこのような挑戦ができた部分もありますが、“どう生まれ変わらせるか”という視点があったことも大きいです。過去の人気に頼るのではなく、どの国の子どもにも“いま”の感覚で響く形に翻訳し直すことが、成功の鍵になっているのです。

世界では、YouTubeを起点に再評価された作品が増えています。オーストラリア発のアニメ『Bluey』は家族の日常を描いた作品で、イギリスBBCとの共同展開により世界的ヒットとなりました。テレビ発の作品が、配信やYouTubeで人気を広げ、ファンコミュニティを育てた成功例として知られています。

フランス版『ドラえもん』も、同じように新しい広がりを見せようとしています。YouTubeで新しい世代の子どもたちにドラえもんを知ってもらい、配信展開を軸にさらなる広がりを目指しています。稲葉氏も「ゆくゆくは映画展開にもつなげていきたい」と話していました。

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