10年の休止を経て…アニメ《ドラえもん》が「フランス」に再上陸!配信先に「YouTube」を選んだテレビ朝日の"深謀遠慮"とは?
『ドラえもん』はこれまで70を超える国と地域で展開、数多くの言語に翻訳・吹き替えされています。それでもフランスでの再展開は実は簡単ではありませんでした。
10年ぶりの再上陸でまず行ったのは、現地の子どもたちに自然に響く声へのアップデートでした。ドラえもん役にはフランスでジム・キャリーや『ライオン・キング』のシンバの声でおなじみのエマニュエル・キュルティル氏、のび太役には『ドラゴンボール』孫悟空の声で知られるブリジット・ルコルディエ氏を迎えています。いずれもフランスでは広く知られた声優で、いまの子どもたちにも親しめる声を選んだそうです。
また、ひみつ道具やキャラクター名の翻訳も、現地で刊行されている漫画版の表記に合わせて一新されました。たとえば「アンキパン」はrappel-pain(=思い出させるパン)に、「どこでもドア」はporte "va partout"(=どこにでも行けるドア)に、「タケコプター」はBamboucoptère(=bambou<竹>とhélicoptrère <ヘリコプター>の造語)になりました。
響きが柔らかく、子どもにも親しみやすい言葉に置き換えられています。こうした細部の工夫が、フランスの子どもたちにとって“自分たちのドラえもん”として自然に受け入れられる鍵になっているのです。
それでも、課題はまだありました。
ヨーロッパでは子ども向け番組が公共放送を中心に放送されることが多く、教育的な要素や倫理的な表現への配慮が重視されます。そのため、セリフの言葉づかいや吹き替え、脚本のトーンにも、現地の文化や子どもの感覚に合わせた細かな調整が求められます。保護者が安心して子どもに見せられる内容にするなど、クリアすべきハードルは少なくありません。
前述の稲葉氏は、「“ドラえもんだから通る”わけではありません。届け方を変えなければ、次の世代にはつながらないんです」と強調します。
フランスの声優陣にも話を聞いてみた
MIPCOMカンヌに来場していた現地の声優たちも、その“届け方”を体現していました。
キュルティル氏に、自身の演じたドラえもんというキャラクターをどう捉えているのか尋ねると、「困っているのび太をドラえもんはいつも助けて、2人のあいだには確かな絆と友情がある」と実感を込めて答え、続けて「観客が2人を本当の友だちだと感じられるようにしたい」とも話します。



















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