「最期は家で」のはずが…後悔しない看取りのためにすべき準備。「なんちゃって在宅診療」を選ばないためのポイントとは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

医師に対しては、私たちが思っている以上に周囲が忖度します。そのため、当院に所属している医師に、私は、医師は“存在だけでパワハラそのもの”という自覚を持つよう、常に伝えています。

病院では、患者さんからの医師に対するクレームや不満などが事務職や看護師に伝えられても、そのまま伝えられずに握りつぶされることがほとんどです。「医師の顔を潰す」という思いから忖度し、大事な情報を伝えないのです。

遠慮・忖度は不要

患者さんやそのご家族も、知らず知らずのうちに「お偉いお医者さま」というイメージから、忖度や遠慮をしてしまっています。

薬の副作用が出ていたり、まったく効果が出ていないのに、医師にその事実を伝えられない。本当はもっと話を聞いてもらいたいのに、医師に思っていることが言えない。そんなことはよくあります。

なぜ言えないのかと聞くと、「嫌われたくないから」という心理がその土台にあるようです。

「せっかく出してくれた薬が、効かないとは言えない」「副作用が出て本当は薬をやめたいけれど、それも言えない」「抗がん剤の治療によって食欲がなくなっているけれど、それを言うと治療をやめられそう」といったことです。

『「家で幸せに看取られる」ための55のヒント 「よく生き、よく死ぬ」ための新常識』
『「家で幸せに看取られる」ための55のヒント 「よく生き、よく死ぬ」ための新常識』(エイチアンドアイ)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

医師や看護師、病院に対して、絶対に遠慮や忖度はしないでください。

「反抗すると、いざというときに入院させてくれなくなるのでは」「嫌われたら、ちゃんと向き合ってくれなくなるのでは」。そんな不安から従順になってしまいがちです。

ただ、そんな対応をする医師や病院が本当にあるなら、そもそもみてもらわないほうがいいのです。思っていることや不満を正直に言って聞いてもらえない医師は、そもそも「医師としてのプライド」から適切な投薬や判断ができない場合が多いといえます。

薬の効果がないとき、副作用があるとき、医療機関の対応が悪いとき、ちゃんとそのことを伝えましょう。

忖度は長い目で見ると、その医師や医療機関の質を低下させることにもつながります。

医師は毎日、何人もの患者さんをみていますが、患者さんにとって主治医は1人です。毎日、患者さんは病気や老衰という状態のなかで最期まで、かけがえのない大切な時間を過ごしているのですから。

医師が患者さん1人ひとりと真摯に向き合うことは当然のことです。

山中 光茂 しろひげ在宅診療所院長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまなか みつしげ / Mitsushige Yamanaka

1976年三重県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。外務一種公務員試験に合格するも外務省に入らず、途上国医療に関わりたいという思いから群馬大学医学部に入学。学生時代、学費を稼ぐために新宿・歌舞伎町で名物スカウトとして活躍。医学部卒業後、ケニアの離島で医師としてエイズ対策プロジェクトの立ち上げに携わる。「NPO法人少年ケニアの友」の医療担当専門員。三重県松阪市長を2期務め、現在は東京江戸川区のしろひげ在宅診療所において、院長として「在宅医療」の普及に尽力。著書に『しろひげ在宅診療所』(角川春樹事務所)、『余命わずかの幸せ』(青灯社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事