好調ANAがそれでも上方修正を見送る理由 中国人の"訪日熱"で上期の利益は過去最高
これに対し、ANAHDは上半期の実績が期初計画を超過したにもかかわらず、通期計画(営業利益で前期比25.6%増の1150億円)を据え置いた。
理由の1つとして同社は「今夏以降、中国の航空会社が日本への便数を増やしたり、機材を大型化している。そのうえ、10月に日中を結ぶ路線が相次いで就航し需給バランスが緩んでいるため、今後の動向を注視したい」ということを挙げる。
羽田の発着枠拡大で競争激化も
今年5月に日中航空当局が合意したことを受け、10月の冬ダイヤの開始時に、羽田空港と北京、上海、広州を結ぶ昼間帯の発着枠が拡大した。JALとANAは広州便を新設し、北京と上海の便を1日1便ずつ増やした。
そのほか、中国東方航空や中国南方航空なども就航し、羽田発着の中国便は12便増の1日32便となった。LCC(格安航空会社)も中国線を増やしており、確かに供給過多になる可能性は否定できない。
競争激化が現実味を帯びる中、JALは中国路線の機材をいち早く小型のものに切り替えた。座席の供給量(座席数×飛行距離)を1割減らすことで、上半期の搭乗率は前年同期比13ポイント上昇となる78.8%まで高まった。供給量を絞ることで搭乗率を引き上げ、1便当たりの採算性を向上させる戦略だ。
一方、ANAは上半期の座席供給量を前年同期比で4%増やしながらも、搭乗率は74.3%と10ポイント弱上昇した。訪日需要の高まりによって、乗客の輸送量(有償旅客数×飛行距離)が2割も増加したためだ。
同社は来年2月、比較的余裕がある深夜早朝の発着枠を活用し、羽田―上海便をさらに1日1便ずつ増やすなど、今後も拡大路線を邁進する。2015年度通期の国際線全体の計画を見ても、JALの供給量が前期比1.5%増にとどまるのに対し、ANAは同10.4%増という高い目標を掲げる。
競争激化によって、仮に目先は業績に対してマイナスに働いたとしても、中長期的に大きな需要が見込める中国路線で存在感を増していく――。通期の業績計画を据え置いたANAには、そんな思惑があるのかもしれない。
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