「賞味期限は2時間」、ほっかほっか亭が守り抜く「できたて」の絶対的価値。米高騰で赤字になっても貫いた「おいしいごはん」のこだわりとは?

✎ 1〜 ✎ 28 ✎ 29 ✎ 30 ✎ 31
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そして、この手頃さ、490円から1000円までの価格設定を可能にしているのが、小さいもので30平米、大きいものでも80平米という店舗の面積だ。狭いからこそ、賃料と固定費を抑えられている。

また、パソコンがなかった時代から積み重ねたオペレーションの効率化により、2~3人と少ない人数で店舗を回し、人件費が抑えられていることも大きいそうだ。

メニューごとに、「1から手づくりするもの」と「あらかじめ加工しておくもの」に分けられた緻密なマニュアルがある。それが、効率化とおいしさに大きく貢献しているのだ。

たとえば、野菜のカットやサラダのセッティングは開店前や客足の少ない時間に。「できたて」での提供が必須の揚げ物は決められた分数で揚げ、ごはんは提供直前に盛る──。マニュアルは新商品が出るごとに逐一更新されるため、全国どこでも同じ品質を保てる。

開店前の野菜カット
開店前に野菜をカットして仕込んでおく(写真:ほっかほっか亭総本部提供)

「1日のオペレーションの流れもマニュアル化されており、毎日やることが大枠決まっているので、少ない人数でも回せています」(信木さん)

新店舗のオープン前にはFCオーナー向けに、店舗をほぼそのまま再現した「研修センター」で研修も行われる。期間は基本、1カ月だ。加えて、新入社員や中途社員については、配属先を問わずはじめに店舗で一定期間働く。

つまり全員が「実際に弁当をつくってレジをする」経験者となるのだ。すると、毎日来店する客のありがたさ、昼と夜のピークの忙しさ、パートさんに支えられていることへの感謝などを実感できる。

だからこそ、誰からのアイデアも机上の空論にならない。現場感覚を伴った運営がなされていることが、ほっかほっか亭の強みのひとつになっている。

また、入社後のバックアップ体制も万全だ。研修センターは教育専門の部署で、若手の継続的な育成や店長、スーパーバイザーなどのフォローも担っている。

それに加えて、商品本部のメニュー開発担当者と購買担当者は、毎月のように本部下にある直営店に入り 「自分たちが提供しているマニュアルやレシピが正しいか」「調達している原材料が正しく規格通りで届いているか」「食材はしっかり調理できる状態か」などを必ず確認しているそうだ。

接客研修の様子
接客研修の様子(写真:ほっかほっか亭総本部提供)

長く・やりがいを持って働いてもらうために

ほっかほっか亭で働くスタッフの中心である、パート社員へのフォローも手厚い。

やりがいを持って長く働いてもらえるよう、現場の作業だけでなく「どうしたらより良い店舗運営になるのか」意見を言える機会も作っている。10年以上前から実施している「不満足度アンケート調査」だ。スーパーバイザーや営業マンが気づきにくい、オペレーションや調理機器、シフト、賃金などの課題発見と改善につながっている。

パートであっても複数店舗の運営を任せる役職も用意しており、それまでのキャリアを鑑みた社員登用制度もある。

さらに社員に対しても「長く働いてもらう」ために10年以上前から、所定の労働時間を一般的な「休憩を含んで8時間」ではなく「7時間半」に変更した。一般的な企業より30分短くすることで、プライベートを充実しやすい仕組みづくりをしている。

「不満足度調査」用紙の一部
「不満足度調査」用紙の一部(写真:ほっかほっか亭総本部提供)
次ページ「個人の裁量が極めて大きい」企業文化
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事