車のセールスを例に出したが、値段交渉で重要なのは「両者が納得して、気持ちよく交渉を終える」ことだ。間違っても、お客さんに「交渉に負けて損をした」などと感じさせてはいけない。
そのためには、単なる「値段交渉」に終始するのではなく、お客さんの「値段以上に大切にしている価値観」を、会話を通して探り出すことが必要だ。
「固定観念」が交渉をフイにする
たとえば、お客さんの希望する30万円の値引きをできず、10万円までの値引きしかできなかったとしよう。
ただ話を聞いていると、どうやらこのお客さんは「車の安全性」を非常に気にしているようだ。そこで今度は、この仮説を検証するために、
「値引きは10万円が限界ですが、この車には安全性を高めるためのこんな機能が搭載されていて……」
といった話をしてみる。たとえ値段の面で期待に沿うことができなくとも、異なる角度から、相手の価値観に寄り添う提案ができないかを模索するのだ。
「それなら、この価格で買います」となれば、両者にとって満足のいく取引が成立したことになる。
こうした場合に重要なのは、「この商品を買う人は、こういう部分を好む傾向がある」といった、一般論や経験則にとらわれすぎないことだ。そうした「型」を重視しすぎると、画一的な営業しかできず、相手の潜在的な価値観を見逃してしまう。
相手の価値観に触れるには、相手のことを注意深く観察し、言動の背後にある主観に対して想像力を働かせることが大切になるのだ。
また当然ながら、相手に満足してもらうためにと、自社の商品のアピールポイントを延々と説明することも、あまりよい手とは言えない。
車のセールスの例でいえば、仮にその車の「事故率の低さ」や「耐久性の高さ」といったデータをいくら準備したところで、目の前の相手が「車の安全性」に重きを置いていない人なら、独りよがりな提案に終わってしまうからだ。
だからこそ、「客観的なデータ」よりもまず「相手の主観」に目を向けること。この順番を間違えることがないよう、常に頭に入れておいてもらいたい。
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