かたや相手に対する仮説がない人間は、とにかく「自分の都合」で提案を押し通そうとする。そうなると当然、意見の食い違いや衝突が起きやすくなり、相手は「この人は自分のことを全然わかってないな」と耳を閉ざしてしまう。提案を持ちかけた側も、「話のわからない人だなあ」と愚痴をこぼすことになる。
ビジネスパーソンとして、どちらがより結果を出すことができるかは、明白だろう。
相手の「本音」をどう引き出すか
仮説というのは文字通り「仮の説」であり、必ずしもそれが「正解」であるとは限らない。だからこそ、一度立てた仮説に固執せず、相手の対応・反応を見ながら、柔軟に仮説を書き換えていくことも重要だ。
この考え方はセールスにおける値段交渉と似ている。わかりやすい例として、車を買おうとしているお客さんとのやり取りで考えてみよう。
営業担当からの価格説明に対してお客さんが、「30万円値引きしてくれたら買います」と言ったとする。あなたが営業だったら、どのように反応するだろうか?
この場合、お客さんの発言の「真意」を探るために、大きく次の2つのような仮説を立てることができる。
仮説2: 30万円の値引きはマストではなく、「10万円でも安くなれば御の字」くらいの気持ちで、あえて高額な値引きをふっかけてきたのではないか
こうした仮説を立てたうえで、次は「実際にどれくらいの値段までなら割引が可能か」という現実的な問題を念頭に置きながら、営業は「仮説→検証」のやり取りを試みることになる。
たとえば30万円は無理でも、15万から20万円の値引きをして、「仮説2」の回答に対応できるのであれば、値段交渉にお客さんを誘ってみる。
「できれば私も大幅に値引きしたいんですが、自分の裁量でできるところは、10万円くらいなんですよ。それでも上乗せができないか、上司と交渉してみますね」
そんな話から、お客さんの反応を見ていくのだ。
そこまでの値引きが不可能であれば、別の商品を紹介してみる。
「その値段だと、私の権限ではこちらの車は難しいですね。たとえば同じ車種の車ですが、こちらはどうでしょう?」
それでお客さんが、「いや、こっちのほうがいいな」と戻ってくるようであれば、今度は可能な値引きの幅を交渉してみる。
いずれにせよ、自分なりの仮説をもとに「相手の本心や要望がどこにあるのか」を見極め、「互いの主観が一致するところ」を探っていく作業が必要になるわけだ。



















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