「絶対増えてるでしょ…」「子猫サイズになってる」 歌舞伎町の《大量ネズミ》 新宿区は1229万円かけて対策も…"恐ろしい現実"

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ネズミが減らない要因の1つとして、専門性の低い駆除業者の存在もあると大庭さん。「安価でネズミ駆除をします」とウェブサイトやSNSでうたうが、実際は適切な知識やノウハウを持たない業者がいる。

ネズミ被害に困っている人が、安いという理由で依頼するが、業者はその場しのぎの対策しかせず、結局また現れてしまう……ということが起こっているのだという。

ビルや飲食店が密集した土地柄、不適切なゴミ出し・ゴミの管理、路上での飲食、スーパーラット、お粗末な業者など、さまざまな要因が絡み合って、歌舞伎町からネズミが減らないことがわかった。

ネズミ
屋根裏などに巣食うネズミたち。配管がある場所などはネズミによる漏電にも注意だ(写真:株式会社ミナト提供)

「約1229万円」では難しい

では、新宿区が約1229万円をかけて行った対策は、どのくらいの効果が見込めるのか。大庭さんは「正直、この予算では難しい」と指摘する。

「本当にネズミを減らすなら、朝から晩まで業者が入れ替わり立ち替わりで、あらゆる建物やマンホールに毒エサを仕掛けたり、死骸には1匹につき200~300匹のウジが発生してハエになってしまうので、そうなる前に処理や清掃をしたり……それだけの業者を確保する必要があるので、1229万円ではとても足りません」

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仮に歌舞伎町のネズミを減らすことができても、ほかのエリアに集団移動し、そこで繁殖してしまうかもしれない。それでもいいのでしょうか、と大庭氏は疑問を投げかけた。

何とも難しい問題だと、さまざまな人に話を聞いて痛感した。新宿区の、少しでもネズミの増加に歯止めをかけたい、という思いにはとても共感できる。しかし、本当に成果を出すならば、予算や方法などを見直すべき、という専門家の見解ももっともだ。

1つだけ確かなのは、歌舞伎町に限らず、あらゆる場所で、人間とネズミの生活圏が重なっていること。そのため人間の生活エリアに入ってこないような対策をし、安心・安全を確保して共生していくしかないのだ。行政に丸投げするだけでは、その実現は難しいだろう。

たとえば、ゴミのポイ捨てをしない。そんなささやかで当たり前のことでも、1人ひとりが意識することで、何らかの歯止めになるのではないか。ネズミと向き合うには、「チーム歌舞伎町」でなければいけない。取材を通じて強く思った。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京生まれ。大学中退後、広告代理店勤務を経てフリーのジャーナリストに。

社会問題や人物ルポ、歌舞伎町や夜の街を題材に執筆。陽が当たりづらい世界・偏見を持たれやすい世界で生きる人々や、そこで生じている問題に着目した記事を書くことを使命としている

著書に『炎上系ユーチューバー 過激動画が生み出すカネと信者』など。新宿ゴールデン街「プチ文壇バー月に吠える」、四谷荒木町「ブックバーひらづみ」の店主でもある。

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