「反発規制」があっても"飛ぶクラブ"は作れる 日本に足りないのは例外を突くしたたかさ

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そのために筆者が必要だと考えているのが、足かせとなっているゴルフ規則の改定である。巷間、競技規則とエンジョイ派向けの規則を分けるべきとの主張を聞く。しかし、R&AとUSGAに抜本的な改定を迫るとなると実現性は薄い。そうではなく、規則の「例外」を突いてある種の「条件闘争」に持ち込んではどうだろう。

ゴルフ規則を読むと、例外規定がいくつもある。その一例が距離測定器の使用である。「規則14-3.人工の機器と異常な携帯品、携帯品の異常な使用」では「b.プレーに影響するような距離や状況を測る目的のもの」が明確に禁止されており、違反の罰は競技失格となるのだが、ゴルフ規則の続きには以下が明記されている。

注:委員会はプレーヤーが距離のみを計測する機器を使用することを認めるローカルルールを制定することができる。

 

これを適用して全英アマチュア他いくつかの大会では距離測定器の使用をローカルルールで認めている。

ローカルルールで認められるようにする

高反発クラブもこれに倣い、委員会が高反発クラブの使用をローカルルールで認められる裁量を、例外規定に盛り込むのだ。つまり、プロのトーナメントやオープン競技のような大会は従来通り禁止とするが、シニア競技、クラブ競技、月例競技などは、委員会の裁量によって高反発クラブの使用をローカルルールで認められるよう、USGA、R&Aに働きかけるのだ。このことが、ゴルフルールに明記されれば、委員会がローカルルールで高反発クラブの使用を認め、自ら審判となるゴルフの本質を守りつつ堂々と高反発クラブでプレーできるし、業界のモヤモヤも解消できる。

補足すると、ここでいう委員会とは競技を管理する委員会をいい、競技に関する問題でない場合にはコースを管理する委員会をいう(ゴルフ規則より)。細かい話になるが、規則「4-1.クラブの形状と構造」の「a.通則」に、注:委員会は高反発クラブ(ペンデュラムテストプロトコル(R&Aテスト内規)に定められている上限を超えるスプリング効果を持ってはならない)を使用することを認めるローカルルールを制定することができる。と、たった1行加筆すれば、メーカーの技術革新への挑戦意欲が再起動し、革新的開発が進むはずである。

このルール変更には業界一丸となって取り組む必要がある。特に、クラブを開発・生産・販売しているメーカー、流通の集まりである日本ゴルフ用品協会がその推進役となって、R&A、USGAへ強力に働きかけ、ルール変更を実現する。そうすれば、ゴルファーが飛びを実感できる商品が登場し、ゴルフを楽しめるゴルフ寿命が延び、市場も活性化するはずだ。

嶋崎 平人 ゴルフライター

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しまさき ひらと / Hirato Shimasaki

1976年ブリヂストン入社。1993年からブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発、広報・宣伝・プロ・トーナメント運営等を担当、退職後、ライターのほか多方面からゴルフ活性化活動を継続。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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