世界初、iPS細胞を使って失明を防ぐ 加齢黄斑変性の治療で経過は良好

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 ――2例目の移植手術の準備も進めていましたが、実施を見送りました。

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網膜色素上皮細胞の移植手術(資料:理化学研究所/先端科学医療財団)

「遺伝子変異があるため中止した」という報道がたくさんありましたが、大きな誤解が生じています。健康な人でもがんや病気に関連する遺伝子変異が20~30か所はあると言われていますし、病気とは関係ない変異を含めればもっとたくさんあります。2例目に遺伝子変異はありましたが、細胞の安全性にとって問題となる遺伝子変異ではないと考えています。

また遺伝子変異は、細胞を培養していると必ず起こるものです。もともと、私たちは遺伝子変異が少々起こっても安全性が確保できるプロトコル(研究計画)をつくっていました。

ただ、そのような事実があまり理解されていないので、社会的な合意が不十分なまま手術を行うのは危険だと考えて、「休止」としました。培養した細胞は、冷凍してストックしてあります。

今、厚生労働省と文部科学省が再生医療に使うiPS細胞の安全性評価の指針を作ろうとしています。それができれば、2例目を再開できるのではないかと考え、社会的に落ち着くのを待っているわけです。

安全性の高い網膜色素上皮

――網膜の細胞自体の安全性は高いのでしょうか。

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iPS細胞から網膜色素上皮細胞シートを作る(資料:理化学研究所/先端医療振興財団)

私たちが使っているのは、網膜色素上皮という細胞です(解説2<4ページ目>)。網膜色素細胞上皮は、もともと転移した悪性腫瘍の報告もまったくない。そんな細胞はめったにありません。がん遺伝子に生まれつき一部変異があって、あちこちにたくさん腫瘍ができてしまう家族性腫瘍の患者の場合でも、網膜色素上皮は分厚くなることはあっても腫瘍になることはありません。

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