「貴樹は松村北斗のためにあるような役」「"拗らせてる"けどリア充も楽しめる」 実写版映画『秒速5センチメートル』が予想外に楽しめたワケ
ところが驚いたのは、映画を見たとある記者の、自身ののろけのような感想で回収されている記事が出ていたことだ。世の中には幸福な恋愛の思い出だけを持った“リア充”もいること。充実した人もさみしい人も、過去さみしくていま充実した人も、どんな人もその人なりに『秒速〜』は楽しめるのだと思うと、実に懐の深い作品である。
初恋の美しい思い出に酔える理由は、ひとえに、幼少期の貴樹役の上田悠斗と明里役の白山乃愛があまりにも儚く純粋で美しいからだろう。
また、少なくとも実写は、アニメ版よりも、少しだけ主人公が変化した先を描いている。

戸塚純貴が“秒速”だった
名優・宮﨑あおいや吉岡秀隆が、実写オリジナルキャラとして登場している。正確には宮﨑が演じる役はアニメにも存在しているが、実写版のほうがきわめて重要な役割を与えられている。吉岡は完全にオリジナル。
ちょっと上の世代が登場することで、観客の層も広がる目配りか。宮﨑あおいももちろんいいが、吉岡秀隆の信頼感は半端ない。物語の良心を担っている。地球を攻めてくるものがいたとしたら、まず吉岡秀隆を捕まえると地球は相当なダメージを被るだろう。
最後に言いたい。今、あちこちで引っ張りだこの戸塚純貴(『虎に翼』のスピンオフが楽しみ)の無駄遣いではないかと思うような使われ方にびっくりした。まさに“秒速”。まるで桜の花びらのようだった。
以上8つの注目点を挙げてみた。
シンプルな構成で、人間の繊細な感情や風景描写を絵で再現しようとする偏執的なまでの気迫で勝負していたと感じるアニメと、それを1回解体し再構築し、いろいろな要素を付加した実写版。この違いはアニメと実写の相違か、それとも時代の相違であろうか。
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