「貴樹は松村北斗のためにあるような役」「"拗らせてる"けどリア充も楽しめる」 実写版映画『秒速5センチメートル』が予想外に楽しめたワケ
篠原明里は書店員をしていて、本のセレクトや手書きポップのセンスがいい。いつも上を向いて生きている。
幼い頃のあの子がこんなに素敵に成長していたという感じなのだが、高畑充希の特徴で、どんな役をやっていても、大きな瞳がガラス玉のようにうっすら虚無を感じさせるのだ。
心ここにあらずな感じや、なんだか手が届かない感じ。あるいは、パソコンのストレージに余裕がいっぱいあってフル稼働していない感じ。余力で何か別のことをしている気配がするのだ。
要するに能力が高く、ちょっとやそっとではいっぱいいっぱいにならない優秀さ。
彼女の、その今ここにすべてを注いでいない感じ(悪い意味ではない優秀だということ)が、実写版『秒速〜』に存分に生かされていて、いい意味で鳥肌が立った。

20代で高校生役を演じる若手俳優は少なくない。だが、大抵やや無理を感じるものだ。ところが、森七菜の高校生はAIなんじゃないかと思うほどパーフェクトに十代の未成熟なみずみずしさを発揮していた。
制御できないエネルギーすべてが恋愛感情に還元されてしまうどうしようもなく衝動的な躍動。あまりに魅力的すぎて、貴樹と明里の物語がかすみそうになった。
種子島のロケやロケットのパーツ(?)を運ぶ車のダイナミズムから、高校生が通学に使用する原付のカブの素朴さまで、目に映るものの何もかもすばらしく、種子島編は見る価値がきわめて高い。
米津玄師の「切実な声」が胸に迫る
「また米津か」と思わせない、圧倒的な劇的世界とマッチングする稀代のヒットメーカー。21世紀の切実さを1人で背負っているような人で、今回も、彼の切実な声が胸に迫る。
というのは、もう誰でも思うことであるのだが、米津がすごいのは、作中にほかの圧倒的な曲が出てきてもへっちゃらな感じである。
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