「貴樹は松村北斗のためにあるような役」「"拗らせてる"けどリア充も楽しめる」 実写版映画『秒速5センチメートル』が予想外に楽しめたワケ
映画『ファーストキス 1ST KISS』(25年)の大ヒットも記憶に新しい、令和の顔と言っていい松村北斗。STARTO ENTERTAINMENT所属のアイドルグループ「SixTONES」の1人としての俳優業には思えない稀有なムードを持った不思議な逸材だ。
濃すぎず、薄すぎず、主張しすぎないが整った顔立ちと、空手を習っていたせいか折り目正しそうに見える佇まいをベースに、見る人の感情や記憶を喚起させる余白をまとった“依代俳優”とでもいえる魅力が『秒速〜』でも大いに発揮された。いやむしろ、遠野貴樹こそ松村北斗にぴったりの役のように感じる。

小学生、高校生と成長し大人になって、人と深く関わらず、黙々と高みを目指してやってきた貴樹のクールさ。でもその閉ざした内面には繊細なやわらかい心が隠れている。
拗らせ演技を測る度数があったとして、おそらく現時点で最適解の演技ができるのが松村だと思う。理想の拗らせ。そのため、女性客は、よくよく考えると面倒くさい主人公を許容してしまう。この主人公の面倒くささについては後述する。とにかく松村北斗は時代の要請にかなっている。
アニメ(絵)と実写のどうしても交わらない部分を彼は繊細に考えて演じていた。ポケットに手を入れるかどうか悩んだと、YouTubeの東映ムービーチャンネル「松村北斗×奥山由之×新海誠 スペシャルトークセッション」で語っていたのだ。
アニメなら成立しても自分がポケットに手を入れたら雰囲気が変わってしまうと自覚したという聡明さ。それが、実写版を成功に導いた1つであろう。
高畑充希のうっすら「虚無」を感じさせる瞳
高畑が演じる篠原明里は、物語の根幹を成す重要な役。貴樹の心を捉えて離さない、ファム・ファタールだ。
アニメ版だと、途中で、え、となる展開になるが、実写では、もしかしてアニメと違う展開になる? と期待させる。なぜなら、アニメと違って、明里パートが貴樹パートと並列して手厚く描かれているから。
しかも、2人が東京の意外と近いところで生活していて、ニアミスしそうでハラハラする。このすれちがい感が実写版の魅力の1つだ。
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