「貴樹は松村北斗のためにあるような役」「"拗らせてる"けどリア充も楽しめる」 実写版映画『秒速5センチメートル』が予想外に楽しめたワケ
今回は山崎まさよしの「One more time, One more chance 〜劇場用実写映画『秒速5センチメートル』Remaster〜」という劇中歌ですっかり観客の心を掴んだなかで、しれっとラストをもっていく。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』でも彼は主題歌を担当していた。
第11回の劇中で『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌であるTM NETWORKの「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」が流れて話題をかっさらっていったという、なんだかおもしろいことになったのだが、米津の歌はそんなことはどこ吹く風な強さを持っている。
『カムカム』と『国宝』ファンも歓喜
これが商業映画の初監督作になる奥山監督。自主製作したオムニバス映画『アット・ザ・ベンチ』(24年)も高評価で、この人に撮ってほしいと思う被写体があとを絶たない人気写真家であり映像作家。
ボケ感ある画が特徴的で、アニメ版はリアルな実景を虹色に彩ったような、いかにも主人公の脳内風景なのだが、実写版はその塩梅が少し違うので、見る人をより選ばない印象がある。

興味深かったのは、境界の表現。
人間と人間の境界、あるいは人間と社会の境界を暗喩的に電車のドアの開け閉めなどで感じさせることは珍しくないし、アニメ版でもそう感じさせるところはいくつもあった。
実写版では、窓に雪が溶けた水滴、アニメにもあった電車の連結のきしみなど、ぱきっと切り分けられない、ずれながら重なり合う部分を、そのものずばり撮影できる。それがアニメと違う実写の強さだとを筆者は実感した。ただこれが作り手の意識的なものかどうかはわからない。
もう1つ印象的だったのは、小学校時代、電車に乗った貴樹をホームから明里が見送るシーンで、パッパッパッと素早く切り替わるいろいろな風景。このリズム感は新海派か奥山派かと、2作とも見た人と話してみたい。
ちなみに撮影は藤井道人監督とよく組んでいる今村圭佑で、編集は『アット・ザ・ベンチ』でも組んでいる平井健一。優秀なスタッフの力も見逃せない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら