アニメと結末が違う?実写映画《秒速5センチメートル》ストーリー構成"改編"の吉凶。ロマンチックだけど「リアルで残酷な物語」を徹底レビュー

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「秒速5センチメートル」
種子島の高校生・花苗を演じた森七菜(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

そして、3話。社会人になって東京で生きる貴樹が映される。だが、すぐにタイトル文字が浮かび上がり、主題歌が流れる。

そこから後は、彼の小学生時代から現在までの、1話と2話では映されなかった出来事が走馬灯のように駆け巡る。そのなかには、彼の知らない明里の生活もある。そこから続くラストシーンの電車が通り過ぎた踏切から振り向く彼の表情は、何かを示していた。

一方、実写版では構成が変わり、社会人として働く貴樹の生活と、もやもやとする彼の心を出発点にして、小学生時代と現在がカットバックしながらストーリーが進んでいく。

高校時代のエピソードのなかでも小学生時代や現在の生活のシーンが織り込まれ、時間の経過とともに物語は進行しながら、過去の出来事と彼の思いが交錯して描かれていく。

宮崎あおい
花苗の姉で高校教師の美鳥を演じた宮﨑あおい(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

原作をオマージュする実写シーンから伝わる情感

実写版と原作アニメは、根幹の物語は基本的に変わらない。そうしたなか、実写版では小学生時代の2人の出会いと絆を深めていく様子が、より尺をかけて丁寧に描かれる。

お互いを思いやる初々しい姿に心が温まる一方、親の都合による引っ越しという子どもにとって理不尽な別れに心を痛め、悲しむ小学生の姿に苦しくさせられる。2人の心のつながりが綿密に描かれる実写版は、より2人の心のあり様が情感をともなって迫ってくる。

また、原作アニメの名シーンの数々は、そのまま実写版でも再現されている。ラストの踏切で2人がすれ違うシーンや、種子島でロケットが雲を抜けて宇宙へと飛び立つ場面のほか、本作の軸になる、貴樹が明里に会うために、大雪の日に遅れる列車を乗り継いで岩舟に向かうエピソードは、細かなカット割りまで原作そのもの。貴樹の不安と焦りが、手に取るように伝わってきた。

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