「43歳で喫茶店を開業」「乳がんで手術も1週間で復帰」 90歳の喫茶店店主が《がん罹患後も週7で店に立つ》ワケ

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そして半年後、栗原さんは真紀さんが見つけてきた医師の手術を受ける。入院の前日まで店を営業し、病院へ。手術は成功し、3日目には退院許可が出た。驚く回復力で、術後のホルモン治療も不要となり、翌年の定期検診を予約して退院となった。

入院・手術・退院までトータル3泊4日。手術のダメージもなく、気持ちもすっきり、さらに元気になって栗原さんは「アレッタ」に帰ってきた。

年が明けて2月の90歳の誕生日は、店に常連客が集まって、真紀さんの手料理で盛大に祝ってもらった。

40歳を過ぎて自分で稼いでみたいと思って選んだ商売が、このアレッタで本当によかったーー。栗原さんはしみじみと言う。

小さい商売ながらも、お金も時間も人間関係も全部自分で決めて、やってきたことは自分に返ってくる。いろんなお客さんとの出会いや交流は一生ものの財産である。

喫茶店アレッタ
常連客は実家に帰るようにふらりと栗原さんの顔を見に店へやってくる(写真:ヒダキトモコ撮影)
喫茶店アレッタ
開業当時の店内。現在まで変わらずに保ち続けてきた(写真:栗原さん提供)

心配しようがしまいが、人生は変わらない

長寿の金言連載
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毎朝、栗原さんは仏壇の両親、夫、長男に向かって、「おはようございます。今日も仕事をさせてくれてありがとうございます」と手を合わせる。

そしてメイクのあとに鏡の中の自分に向かって、「さあ今日も楽しもう」と声をかける。
  
年をとっても働くというのは体にも頭にもいいんです。毎日店を開けて働いてきたから、がんの手術をして90歳になっても、こんなに体が動くし、頭もぼけない。

70代の若い人たちが今から『将来、体がきかなくなったら心配』だとか言うので、そんなことより目の前の毎日を楽しんだほうがいいと言ってやります。心配しようがしまいが、人生は変わらない。取り越し苦労するより、毎日楽しく体を動かしたほうがいいですよ」

アレッタ栗原さん
お客さんにツッコミを入れ、大きな声で笑い、とにかく明るい栗原さん(写真:ヒダキトモコ撮影)

90歳になってもなお、楽しく働き続ける栗原さんの最後の野望は、老衰でコロリと亡くなることだとか。

「これだけ毎日、体を使って働いているんだから、寝たきりになる間もなくエネルギーを使いきって死ねるんじゃないかしら」

どこまでもポジティブな「シニアのワークスタイル」。栗原さんの笑顔に、明日の仕事を億劫に思っていることが恥ずかしくなってきた。

後編の【「韓国コスメが大好き」な90歳! 「乳がんで手術も週7日店に立つ」喫茶店店主・栗原薫さんの《毎日ルーティン》が凄すぎた】では、元気すぎる栗原さんの食事内容や“驚きの毎日”を公開します。

桜井 美貴子 ライター・編集者

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さくらい みきこ / Mikiko Sakurai

1965年生まれ。秋田県出身。出版社勤務の後、フリーランスの編集・ライターとして独立。医療、カネ、性などさまざまなテーマで取材、執筆を続けている。生活実用をはじめとした書籍の企画編集、人物インタビューなど、硬軟の現場を渡り歩く。

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