「坊主丸儲け」のことわざは大きな事実誤認…非課税でも実は意外とシビアな【お寺の懐具合】を探る
つまり、ざっと1000万円だ。一般のサラリーマン家庭と比べれば、結構な高収入にも見える。しかしながら、この1000万円はあくまで宗教法人たる寺院としての年商であって、これをそのまま寺の僧侶(住職)が自分の生活費などに使ってしまえるわけではない。
たとえば先に述べた通り、護持会費とは墓地の管理料的な感覚で徴収されている場合が多い金である。そうなれば墓地の清掃費などを、そこから出さなければならない。
また、現代では寺であっても、そこに存在しているだけで光熱費などが発生する。境内にある樹木の整備も大切で、時には庭師を呼ばねばならないケースもある。また、檀家の葬儀や法事へ赴くために乗る、自動車やバイクの維持費も必要だろう。
寺の本堂の維持費なども大きい。寺とは古い形式の和風建築をオーダーメイドのような形で建てる例が多く、規格化された建売住宅などの建築とはわけが違う。ちょっとした改修などでも数百万円、数千万円かかるという例もあるし、新築するとなると平気で億単位の金が必要になる。
僧侶たちが着る僧衣や袈裟は、すなわち彼らの仕事着であって消耗品でもあるが、一般的なビジネススーツなどと違って、一部の人に対する需要しかない衣類なので、これもそれなりの値段がする。
寺で使う線香やロウソクも、一般家庭の仏壇で使うものよりも上質なものが必要とされる場合が多いので、そういう消耗品費も必要になる。
「宗費」という上納金
さらに、一般的に「宗教法人には税金はかからない」といったことがよく言われるものの、多くの寺は、どこかの教団組織に所属している。
それはたとえば「天台宗」「曹洞宗」「浄土真宗本願寺派」などといった、いわゆる宗派、宗門という団体である(神社界においては、この教団組織として神社本庁が存在する)。こういう教団組織に所属している寺は、そこに対して上納金を支払わなくてはならない(この上納金を「宗費」という)。
この宗費の額は、寺の規模や宗派の別によってかなりまちまちではあるのだが、数十万円程度がボリュームゾーンなどではないかとみられている。つまり、寺にとってはこの宗費が事実上の"税金"という形になるわけだ。
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