「坊主丸儲け」のことわざは大きな事実誤認…非課税でも実は意外とシビアな【お寺の懐具合】を探る
もちろん世の中には、国宝などの文化財を持ち、それを目当てにやってくる人々から拝観料を取って維持されている観光寺院や、広大な土地を所有し、駐車場経営や貸しビル業などで収益を得ているような寺院もある。しかし、"日本のお寺業界"全体のなかでは例外的な少数派なので、ひとまずここでは除外して話を進める。
さて、それでは葬儀を行うことによって寺が得られるお布施とは、どれくらいのものなのだろうか。葬儀の料金に関する統計にはさまざまなものがあるのだが、ここでは一般財団法人日本消費者協会が2022年にまとめた、「第12回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」を参照することにしよう。
これによると、2020年以降に行われた日本の葬儀の平均費用は、161万9000円ということになっている。ただし、このお金がすべて寺、僧侶に渡るわけではなく、まず「葬儀費用一式」、すなわち祭壇を用意するお金や、それを飾る花代、遺影の準備代金など、つまり葬儀社に渡すお金が111万9000円となっている。
そして「通夜からの飲食接待費」が12万2000円。「寺院へのお布施」が42万5000円である。つまり葬儀が1度行われるたび、寺には42万円ほどのお金が入ってくるという計算になる。
これは何か統計的な裏付けのある話ではなく、お寺業界のなかで一般的に言われていることでしかないのだが、「檀家が200~300軒ほどいれば、そのお寺は”寺だけ”で何とか食っていくことができる」とされている。
つまり逆を言えば、檀家が50軒とか100軒とかしかない寺は、お寺だけの収入、すなわち葬儀などの収入だけでは食べていくことができず、その住職たちは寺以外の何らかの副業をやらないと生活が成り立たないのである。
実は檀家が200~300軒に満たない寺というのは、相当な割合で存在する。お寺業界において、一般的なサラリーマンなどをやりながら住職も務めるといった"兼業住職"は、まったく珍しい存在ではない。
100軒の檀家を持つ寺の葬儀収入は約200万円
それはさておき、では200~300軒ほどの檀家を持つ寺の収入状況とはどういうものなのかを、考えてみよう。
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