自宅という自分が主体となる空間においては、病院では出てこなかった本音が患者さんから聞けることも多々あります。それが透析のやめどきという難しいテーマであったとしても、ときに本音を病院主治医に伝えながら話し合いの場に加われるのは、病院主治医と在宅医が連携するよさだと思います。
高齢化に伴い、今後、Aさんのように認知症を患う透析患者さんが増えてくることも危惧されます。本人が状況を冷静に判断できなくなったときに、可能な限り本人の意向を踏まえながら家族や医療者が話し合って、治療をどこまで継続するのか判断することになります。
透析患者の終末期をどう支えるか
もちろん、このような話は命に関わる決断だけに大きな葛藤を伴います。
いざというときに判断を迫られる家族のためにも、なるべく元気なうちに「このような状態になったら透析をやめたい」「もし自分が判断できなくなったら、こうしてほしい」という自分の意思を、周囲に伝えるなどしておくのが望ましいでしょう。
そして今後は、通院で透析を受けている患者さんの終末期を、在宅でどう支えるかも大きなテーマになってくると思います。
例えばがん末期では「緩和ケア病棟(緩和ケアを専門的に行うために病院に設置された病棟)」がありますが、透析をやめた患者さんを対象とした緩和ケア病棟はありませんし、終末期の透析患者さんの緩和ケアのあり方についても、十分なガイドラインが整っているとはいえない現状で、学会や国による議論が始まっています。

筆者は、住み慣れた自宅での最期を支える在宅医療が、終末期を迎えた透析患者さんに対しても行えるのではないかと考えています。
在宅医療の対象となるのは、慢性的な病気や障害などで通院するのが難しくなってきた方です。透析を受けている患者さんも、「通院が大変になってきた」場合は、対象になります。
迷ったら、まずは今通っている医療機関の主治医や、地域医療連携室などに相談してみるといいかもしれません。
(構成:ライター・松岡かすみ)
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