独居で透析治療中の女性(83)が認知症に。"最期まで自宅で暮らす"か、"入院する"か――話し合いを重ね彼女が導き出した「結論」とは

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糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気で、血糖値を何年間も高いままで放置すると、血管が傷つき、将来的に腎不全や失明、足の切断といった、より重い病気につながります。

糖尿病で怖いのはこの合併症です。三大合併症の1つである糖尿病性腎症で透析を導入する人は全透析患者の約4割と、高い割合を占めています。

腎臓は、血液を濾過して老廃物や有害物質を尿として排出し、体の水分量を調節したり、電解質(ミネラル)のバランスを保ったりする役割を担っています。ところが、高血糖状態が続くと、尿を濾過する糸球体にある細い血管が傷つけられたり、詰まったりしてしまいます。

その結果、糸球体の機能が失われ、腎臓の機能が低下します。これが糖尿病性腎症の正体です。

腎機能が正常時の10%以下に低下すると、自分の腎臓では濾過しきれなくなり、老廃物が全身に蓄積してきます。初期には無症状であることがほとんどですが、進行すると尿中にタンパク質が漏れ出し、浮腫(むくみ)が表れます。

さらに進行して腎不全になると、尿毒症症状(息切れ、貧血、食欲不振、全身倦怠感など)が表れます。放っておけば命に関わるため、人工透析で血液を濾過するのは、命をつないでいくための手段の1つでもあります。

1回の治療に4~5時間

人工透析には、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類の方法があります。

日本透析医学会の調査(2023年)によると、日本では血液透析を行っている人が96.9%と圧倒的に多く、Aさんも血液透析を行っていました。

透析では、自身の腎臓の代わりに人工の腎臓(ダイアライザ)を使って、血液から老廃物や余分な水分を取り除きます。1回の治療に4~5時間かかり、それを週3回、通院して行うのが一般的です。

透析をすると、吐き気や頭痛、動悸、不整脈、倦怠感などの副作用が見られる場合があり、Aさんもこれらの副作用によって、透析後にトイレに行けないほど動けなくなったり、立ちくらみを起こして転倒し、ケガを負ったりする頻度が増えていました。

筆者がAさんと関わり始めた当初から病院主治医と話し合ってきたのが、「お1人でどこまで自宅で生活できるか」という点でした。

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