独居で透析治療中の女性(83)が認知症に。"最期まで自宅で暮らす"か、"入院する"か――話し合いを重ね彼女が導き出した「結論」とは

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Aさんは、ご自宅で自由に自分らしく過ごせています。そんなメリットがある一方、先に挙げたように認知症や透析の副作用によって、通院や服薬を忘れる、転倒してケガを負うといったデメリットも目立ってきました。

本人は自宅で生活したいという希望があったものの、何より認知症の影響から、状況を冷静に判断するのが難しい状態です。離れた場所に住む家族も心配し、入院を希望していました。

そこで、筆者はAさんに自宅で生活を続けるうえでのメリット、デメリットについて1つひとつ説明し、何回かにわけて意思を確認していきました。

Aさんが出した結論は…

今のAさんが自宅で療養生活を続ける最大のデメリットは、通院できなくなると透析が受けられないという点にあります。何度か話しているうちに、「自宅で生活を続けること」以上に、「透析を続けながら生きていくこと」のほうが大切という結論に至りました。

在宅ケアの場合、Aさんとの話し合いはもちろんですが、訪問看護師やヘルパーなど、ケアに関わっている人たちの意見も大事です。というのも、ふとした本人の本音を聞いている場合もあるからです。

そして、こうした話も総合したうえで、最終的には入院して治療を受けるという選択をしました。

Aさんのように認知症などの影響で、本人の希望が汲み取りづらい場合などは、特にこうした細やかな意思決定のプロセスも、在宅医療が入ってこそのメリットの1つだと思います。

本人の希望はもちろん大切です。しかし、状況によってはそれを最優先にさせられない場合もあります。Aさんの場合は、致命的なケガやダメージにつながる前に、入院という方針になったのはよかったと思います。

昨今、さまざまな治療が在宅で行えるようになってきましたが、透析はいまだ在宅では難しく、基本的には通院で行われています(腹膜透析は自宅でできますし、血液透析についても一部、在宅で受けられる動きも出てきているものの、まだ一般的ではありません)。

そのため、筆者が在宅医療で透析患者さんに関わる機会はあまり多くありませんが、Aさんのようなケースは経験することがままあります。

透析を行っている患者さんに在宅医療が入ることのメリットは、患者さんの生活の状態を見ている在宅医と、病院主治医が連携できる点です。

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