「役割」を演じるのはなぜこんなに疲れるのか。「理想の母親」「理想の上司」の仮面を外せなくなった人に起こる異変

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冒頭でもご説明したとおり、私たちは場面によってさまざまな仮面を付け替えながら生きています。

社会では役割を演じることも必要であり、その役割も自分の一部です。しかし、役割ばかりで生きていると、素の自分がわからなくなってしまいます。仮面の脱着は意識的に行うこと、また、時には役割から降りて何者でもない自分になれる時間と場所を持つことは、自分を取り戻すために必要なことです。

以下にひとつ、そのための処方箋を紹介します。

役割から離れて過ごす居場所はあるか

処方箋:サードプレイスを持つ
〈会社と家の往復だけでは、ビジネス用と家庭用の仮面を交互に付け替える毎日になってしまいがちです。そこで、会社でも家でもない第三の場所に自分の居場所をつくり、役割から降りる時間を持つようにします。例えば地域の町内会、テニスやゴルフなどの趣味のサークル、学びの場などをサードプレイスとして持っておくと、役割を離れて素の自分に戻ることができます。
サードプレイスはひとつではなく、複数持っておくのがおすすめです。会社と家しか居場所がなければ、そのどちらかに居場所がなくなったとき、選択肢が狭まってしまいます。そうなると、「この場所から排除されたら生きていけない」と思って環境に過剰適応するか、それがうまくいかなければ孤立するか、の二者択一になりがちです。
サードプレイスが複数あれば、「ここがダメでも、ほかにもある」とゆったりと構えられるので、自分が合わない場所に無理して居続けなくてよくなります。ビジネスパーソンという役割を降りたあとは、サードプレイスが生活のメインになり、定年後の自分の人生を支えてくれる場所になるかもしれません。〉

うのみにした価値観や、役割や立場で考えた「こうすべき」でばかり判断していると、本当は自分が何を感じているのか、何を欲しているのかわからなくなり、自分の感情や感覚がわからなくなります。

このような処方箋を実践して、効果がすぐに表れるとは限りませんが、自分らしさを取り戻し、社会との関係を再構築するには、そのためのお稽古をコツコツと続けることが何より大事です。

上谷実礼 医学博士

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うえたに みれい / Mirei Uetani

千葉大学医学部医学科卒業。産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)。公認心理師。千葉大学博士(医学)。千葉大学大学院非常勤講師。生活習慣・生き方と健康との関係に興味を持ち、社会医学系研究室で研究・教育に従事したのち、産業医として独立。のべ1万人以上の面談・カウンセリング実績。アドラー心理学・ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論が専門。著書に『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導』『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(ともにメディカ出版)などがある。

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