盛り上がらない自民党総裁選挙はもはや「オワコン」なのか?民主主義が疑われる時代に「あるべき選挙の姿」とは

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以前は「食品消費税率はゼロにすべき」と言っていた高市早苗氏は、9月19日になって「消費減税には時間がかかる」と方向転換した。大手ITベンダーが、「消費減税の場合、レジなどのソフト変更作業に1年はかかる」と言っているらしく、それでは確かに物価対策には間に合わない。ただし「反・緊縮政策」を期待していた高市支持者にとっては、残念な動きとなったのではあるまいか。

ともあれ、こんな調子で各候補が無難な公約と答弁を繰り返していると、政策の対立軸がぼやけてしまうし、新総裁の目指すべき方向性も見えてこないことになってしまう。

3回連続「2位・3位連合」で決まれば正当性低下の懸念 

もうひとつ、悩ましい問題がある。自民党総裁選は前回も前々回も、党員票で1位になった候補者が決選投票で敗れている。2021年に党員票で1位になったのは河野太郎氏であった。ただし議員投票で岸田文雄氏に後れを取り、決選投票では大差で敗れ去った。2024年は議員票、党員票ともに高市早苗氏が1位となったが、決選投票で石破茂氏に逆転されている。開票作業中に、「高市勝利」を折り込んだ市場が「株高・円安」に大きく振れたことをご記憶の読者は多いだろう。

いや、本来、自民党総裁選とはそういう世界なのである。2位3位連合でも空手形乱発でも何でもあり。何しろその昔は現ナマが飛び交ったとされ、本来、公職選挙法も無縁なバトルフィールドなのである。とはいえ、3回続けて同じことが起きたら、さすがに「どうなってるんだ?」との声があがるだろう。

1978年の自民党総裁選の故事もある。時の福田赳夫首相は総裁再選に意欲を示していたが、当時は国会議員投票に先立って行われた党員・党友による予備選挙で、宿敵・田中角栄元首相が支援する大平正芳幹事長に敗れ去った。そして「民の声は天の声というが、天の声にもたまには変な声がある」との名文句を残し、潔く敗北を認めたのであった。

やはり党員票を軽視してはいけないのである。党員票がいつも議員票に押し切られるということが続いたら、自民党総裁の正当性は低下することになるのではないか。

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