不登校の娘の「死にたい」と重なる母の自死の記憶 子どもの感情をすべて受け止めていた"親の課題"とは?

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また、娘さんの感情に巻き込まれないように気をつけました。思春期の子どもは自分の感情をうまくコントロールできません。理由のわからない怒り、落ち込み、悲しみなどを身近な親にぶつけてきます。

それはある意味、健全な親子関係とも言えます。その際、透子さんは心の中で「ああ、相当荒れているなあ。でも、この感情は娘のもの」と境界線を引いたうえで受け止めました。

一方、逆のケースもあります。透子さんは「このまま学校に行けなくて、社会に出ていけなくなったらどうしよう」という不安に苛まれます。でも、その時に、「どうなるかわからない未来を先取りして悩むのは私自身の問題」ととらえ、その焦りや不安を自分の中で解消するように努めました。これは透子さんにとって子どもへの依存からの脱却です。

言葉にすると簡単ですが、実際には忍耐力のいる取り組みです。時間もかかります。

「いつもうまくいくとは限りません。でも、何が起きているのかわからず、突然暗闇の中に放り出されてもがく前半戦よりはラクですよ。やるべきことを淡々とやればいいですから」と透子さんは笑います。

この感覚は、不登校を経験した親に共通するものではないでしょうか。

真の力、本当のやさしさとは

課題の分離を進めていく透子さんのそばで、娘さんは少しずつ回復していきます。

「もう、中学校には行かない」と自分で決め、高校受験に向けて塾に通い、同じ境遇の子どもたちが集まるフリースクールに出かけて、いろいろな人たちと関わるようになりました。

透子さんは仕事帰りに最寄駅で娘さんと待ち合わせ、カフェでその日のできごとを聞いたり、いっしょに買物する時間を楽しみました。

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