「今思えば、娘はそこまで思い詰めていなかったと思います。でも私は母の自死があったので、その言葉に激しく反応してしまいました。そして、娘が生まれた時に感じたあの得体のしれない不安が湧き上がり、半狂乱になってしまったんです」
「私はこの子を失ったら生きていけない」。あの時抱いた感覚は、まるでこのときのことを予知していたのではないかと思うほどの輪郭を伴う恐怖。しかし、透子さんは「ここで取り乱しては娘が動揺する」と浴室に駆け込み、鍵をかけ、バスタオルをかぶり、声を出さずに「爆発するように泣いた」と言います。
「母の時のような思いはしたくない。この子だけは絶対に死なせたくない」
そんな思いとともに、過去の不安と母親の自死、娘さんの不登校が一本の線でつながった瞬間でした。
表面的な問題に向き合う限界
当初、透子さんは、多くの親御さんがたどる過程と同じように、まず娘さんを学校に戻すことを考えていました。もともと教育熱心な方ですから、勉強に遅れが出ないように、高校進学に向けて不利にならないように情報を集め、娘さんの体調も考慮しながら、いつでも学校に戻れるように準備していました。
ですが、状況は良くなりません。その頃から透子さんは、「学校に行くとか行かないとか、表面的なことを整えようとしているうちはダメなんじゃないか」と思うようになったそうです。
そして、先ほどの、過去からつながった一本の線。
「私はなにかもっと大切なことに気づかなければならない」
透子さんは娘さんにばかり向けていた意識を少しずつ自分に向けていきます。
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