【産業天気図・海運業】運賃市況上向き「快晴」、『四季報』夏号予想からも増額濃厚

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海運業界は業績改善ピッチが早まっている。07年度前半(4~9月)は「快晴」、07年度後半(10月~08年3月)も「快晴」と、直近の業績がピークだった04年度を再現する好環境下にある。最大の要因は海運市況の好転。鉄鉱石や穀物などを運ぶバラ積み船の運賃市況が春先から暴騰、前期は部門赤字だったコンテナ船も主要航路の欧州・米国向けの運賃値上げに相次ぎ成功している。
 為替要因も大きい。ドル建ての運賃収入のウエイトが圧倒的に高い海運各社では円安メリットが大きく出がちだが、大手3社の期初想定レートは軒並み1ドル=115円。しかし、足元の6月中旬時点でも1ドル=120円超の円安傾向が続いており、仮に上期(4~9月)6カ月分だけでも期初想定比5円円安で着地した場合、連結経常利益のかさ上げ幅は日本郵船<9101.東証>が35億円、商船三井<9104.東証>が58億円(最大で)、川崎汽船<9107.東証>は30億円となる。準大手では大手以上に保守的な為替想定をしており、新和海運<9110.東証>は上期115円/下期110円の想定、第一中央汽船<9132.東証>と飯野海運<9119.東証>は通期110円をそれぞれ見込む。『会社四季報』07年夏号では、1ドル=110円の想定はさすがに保守的すぎると見て、大手と同じく115円を基本に、準大手3社の通期連結営業利益を会社予想よりも上乗せした。が、上期6カ月分だけでも仮に120円で着地(『会社四季報』予想よりもさらに5円円安)するとすれば、第一中央汽船と新和海運はさらに各4.5億円、飯野海運は4億円のかさ上げ効果がある。
 四季報最新号が出たばかりで気が早いかもしれないが、9月中旬発売の『会社四季報』」07年秋号では、円高反転や燃料油急騰、世界経済急失速などの波乱要因が生じないかぎり、海運大手・準大手各社の利益を増額する可能性が高い。上記の試算を元にすれば、連結営業益ベースで日本郵船は1400億円(四季報最新号では1370億円)、商船三井1960億円(1900億円)、川崎汽船970億円(940億円)、第一中央汽船165億円(160億円)、飯野海運147億円(143億円)、新和海運170億円(165億円)が最低線となりそうだ。
 為替要因以外を見ても、バラ積み船、コンテナ船、タンカー、自動車船など主要船種では、中国・米国を軸としたグローバルな荷動きが高水準を持続。また、海運各社が03年前後に発注した低船価の新造船が本格的に竣工してくるため、業容拡大に期待が持てる。
個別企業ごとに見ると、日本郵船では05年に子会社化した日本貨物航空がジェット燃料油高の直撃等で大幅赤字を継続。飯野海運も本社ビル(イイノビル)の建て替え開始により本業の海運に次ぐ収益柱である不動産賃貸事業がしばらく低迷を免れない、といった事情はある。しかし、海運業全般を見るかぎり「快晴」の空模様に異変はなさそうだ。
【大滝俊一記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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