野性味あふれる味わいはまるでジビエ! "幻の中の幻"であり"食べられる天然記念物"、「見島牛」に秘められた《離島の奇跡》

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明治時代になって牛肉が牛鍋などで一大ブームとなると、体も小さく肉量が少ない日本古来の和牛は、西洋種との交配によって大型化が図られました。しかし、その結果、気性が荒くなったり、肉質が落ちたりといった問題が生じ、やがて「原点回帰」の動きが生まれます。

そんな中、見島牛は幸運にも、離島という隔絶された環境に生息していたため、西洋種との交配から免れることができたのです。これにより、日本古来の純粋種として1928年に国の天然記念物に指定されました。現代でも「幻の牛」と称される和牛は数多く存在しますが、天然記念物である見島牛は、まさに「幻の中の幻」と言えるでしょう。

そして、国の天然記念物でもある見島牛ですが、先ほど述べたように、じつは食べることができます。「天然記念物を食べるなんて、そんなことアリなの?」と思われるかもしれませんが、これが「アリ」どころか「大アリ」なのです。

見島の島内で食べることはできませんが、島外に出ると味わうことができます。実際にオンライン販売もされており、牛肉マニアの間では密かに人気の牛肉として知られているのです。

見島牛は体高130cm程度と、黒毛和種と比べてもかなり小型で体が大きくなりにくく、肥育期間も長期になるため生産者にはリスクもあります。しかし、実際に私も食べたことがありますが、その肉は赤身の味が非常に強く、野性味溢れる味わいでした。個体差はあるものの、誤解を恐れずに言えば、まるでジビエを食べているかのような印象を受けるほどです。

この特別な牛肉を一度試してみたい方は、山口県萩市にある「みどりや」がおすすめです。「みどりや」では、見島牛とオランダ産ホルスタインを掛け合わせた見蘭(けんらん)牛を一貫生産しており、そのサイトから見蘭牛はもちろん、希少な見島牛も購入することができます。ぜひ、「幻の牛」にトライしてみてください。

見島牛が「和牛」ではない驚きの理由

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さて、見島牛にはもう一つ、驚くべき事実があります。なんと見島牛は、西洋種との交配をまったく受けていない日本古来の純粋種であるにもかかわらず、「和牛」と名乗ることができないのです。

牛の品種表示を定める「牛トレーサビリティ法」では、「和牛」と名乗れるのは「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」の4品種の純粋種か、これら4品種間の交雑種に限られています。見島牛は、これら4品種とは別の系統であるため、残念なことに法的には「和牛」と表示することができず、「肉専用種」と表示するしかないのです。

日本の純粋種でありながら「和牛」の表示ができないというこの事実。見島牛が持つ神秘性を、より一層際立たせていると言えるでしょう。

小関 尚紀 焼肉作家/お肉博士1級/MBA

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こせき なおき / Naoki Koseki

1970年、大阪府生まれ。サラリーマン作家。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院ビジネススクール修了(アジア太平洋研究科修士課程国際経営学専攻/東出浩教ゼミ)経営学修士。修士論文は『キャラクター選好プロセスモデルの探索的研究』 現在、都内企業に勤務しながら作家としての活動を行う。
 

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