人気フォント『貂明朝』や『百千鳥』はこうして生まれた! スマホやPCの文字をイチから手作り、敏腕タイプフェイスデザイナーが紡ぐ"ロマン"
このフォントの最大の特徴は、「バリアブルフォント」という最新技術を日本語で実現した点にあります。これにより縦長や横長はもちろん、文字の太さや形が、まるでスライダーを動かすように自由自在に変化します。
「もともと日本語フォントは、原稿用紙の四角いマスのなかに1文字ずつ入れていくのが基本でしたが、百千鳥は欧文のように、文字が持つ本来の幅に合わせて組むことができるんです。日本語フォントの長年の課題であった“プロポーショナル”なデザインを実現したことも、大きな革新でした。リリース時に“かわいい”、“画期的”という声も多く届き、うれしかったです」

しかし、この自由な文字幅は、日本語特有の縦書きや句読点の処理を非常に困難にしたそう。その開発過程は「ものすごく大変で、エンジニアチームと何度も議論を重ね、通常のフォント制作の4倍もの手間と時間をかけて作り上げた」と西塚さんは振り返ります。西塚さんら制作チームの根気強い努力によって、この革新的な書体は完成しました。
ちなみに、このフォントには、名前にちなんだ可愛らしい「千鳥」の絵文字も隠されており、西塚さんのユニークな遊び心が感じられます。

天才に囲まれ心折れるも、レタリングに出会い…
数々の斬新なフォントを生み出してきた西塚さんですが、意外にも、最初からこの道を目指していたわけではなかったといいます。
福島県で生まれ育った西塚さんは、美術への興味から武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に進学。当初はイラストレーターを志していました。
「でも、周りは本当に絵が上手な子ばかり。野球で言えば“ピッチャーで4番”みたいな才能が集まるなかで、自分はこの道では難しいなと感じていました」
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