東京は世界の都市間競争に勝ち残れるか 2025年、五輪後に東京の真価が問われる

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ハドソン・ヤーズは、周辺エリアににぎわいをもたらした「ハイライン」(高架貨物線跡を利用した公園)の最終工区に直結しており、チェルシーにもつながることになります。チェルシーはかつて工場地帯でしたが、2005年ごろから再開発が進んだエリアです。毎年600万人の訪問者があるというハイラインを擁することで、新たな開発が進み、にぎやかな街になっています。ハイラインによって、ハドソン・ヤーズとチェルシーがつながれば、ウェスト・サイド一帯により一層のにぎわいがもたらされることになるでしょう。

パリ

世界有数の観光地となっているパリ市内では、歴史的建造物や街並みの保護のために、都心部における都市開発は小規模です。しかし、2014年時点において、パリ市内では市内の総面積の実に10%にあたる1000ヘクタールの敷地で都市再生のプロジェクトが進行しています。70以上のプロジェクトが、歴史的遺産を保護しつつ、現代的な建築やパブリック・スペースの創出によって、パリの表情を大きく変えつつあります。

フランス国立図書館

パリ第13区の左岸地区は、セーヌ川沿いのアウステルリッツ駅からイヴリー・シュル・セーヌまでにかけての130ヘクタールに及ぶ地域です。ここでは、フランス国立図書館を中心として、オフィス、商店、芸術・文化、大学、住宅、公共施設など、さまざまな機能が集積し、長期的な再開発が継続しています。中でも、アウステルリッツ駅は新たな多目的拠点として生まれ変わることが予定されています。ここでは、建築家ジャン=マリー・デュティヨーとジャン・ヌーヴェルの設計による駅の再建が行われ、緑豊かなパブリック・スペースのほか、5万1000平方メートルのオフィス、ホテル、商業施設、1万3000平方メートルの住宅が作られる予定です。全体の完成は2020年の予定です。

パリの北部には、2つの広大な開発地域が存在します。パリ北東駅周辺とクリシー・バチニョールです。パリ北東駅は第18区と19区にまたがる200ヘクタールの広大な開発地域で、サン・ドゥニ平原南部の急速に変化する地域と結びついています。かつて工場などが多く存在したこの地域には9つの都市再生プロジェクトが計画されており、2万8000人の新たな居住者、4万1000件の雇用を創出することが目標とされています。

トラムT3線(2012年完成)、RERE線のローザ・パークス駅(2015年完成予定)、トラムT8線(2020年完成予定)という都市交通ネットワークと連動する計画は、オフィス、住宅、大学、パブリック・スペースを含む大型の複合開発を含んでいます。

また、第17区の中心にあるクリシー・バチニョールの開発は、パリ最後の大型不動産プロジェクトと形容されています。このエリアは、ちょうどラ・デファンスとパリ北東駅の間に位置します。鉄道関連施設を移設することで生まれた50ヘクタールの敷地には、10ヘクタールの大型の公園が生まれ、これを囲む形で56万平方メートルの住宅、オフィス、商業施設などの建設が始まっています。建築家のレンゾ・ピアノが設計するパレ・ド・ジュスティス(司法宮)の高層ビルを仰ぐ緑地は、パリに生み出される新たな地区の顔となるでしょう。

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