9割の医師が望まない「自分への延命治療」の実態《アンケートで判明》――「本当はやる意味がない」過度な終末期医療への本音【医師が解説】
事前の終末期に関する意思表示である「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の認知度は、2023年の政府調査でも5.9%にとどまり、近年通じてほぼ変わらない状況が続いています。
「延命治療を受けたくない」という意思を文書で残している人は非常に少ないと見られ、ACPに対する賛成意見が69.8%あるにもかかわらず、実際の行動には結びついていません。
法的裏付けがないため、医師にとってもリビング・ウィルの効力は不透明で、実際には病院や家族との合意形成に委ねられているのが現状です。
この政府調査では、終末期に人工呼吸器や心臓マッサージを望まない医師や医療従事者が8割以上でした。これに対し、一般の国民では6割未満にとどまることが報告されています。
先に挙げた海外の調査と同様に、日本でも医療の専門的知識があるほど無理な延命治療を望まない傾向にあるといえそうです。
助からなくても心臓マッサージ
では、日本の医師はこのような現状をどう考えているのでしょうか。
医療情報サイトm3.comが2024年に実施したアンケートでは、開業医の91.5%、勤務医の90.3%が「日本国内での終末期医療についての議論は不十分」と回答しています。
勤務医らは次のようにアンケートで回答しています。
実際、救急搬送される高齢者でも、末期がんや認知症の終末期にある患者で、本来であれば自然な看取りが適切だったケースが少なくありません。
筆者自身も救急医療の現場に立つことがありますが、例えば90代の認知症患者が意識を失い、心肺停止で運ばれてくることもあります。
医学的には蘇生術をさまざま実施しても元の状態に戻ることは考えにくいのですが、事前の意思表示など何もなければ、家族の到着を待って「関係者が納得するまで心臓マッサージなどを行わざるを得ない」というのが、医療現場の状況なのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら