9割の医師が望まない「自分への延命治療」の実態《アンケートで判明》――「本当はやる意味がない」過度な終末期医療への本音【医師が解説】

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まずは海外の報告から紹介しましょう。

国際的な調査をまとめた最新の論文が『医療倫理学ジャーナル(Journal of Medical Ethics)』に発表されました。北米や欧州、オーストラリアの医師に、自らが末期がんや認知症の終末期に置かれたら、どのような治療を望むかを尋ねたものです。

安楽死を「良い」とする意見も

結果は一貫していました。

9割以上の医師が「心肺蘇生や人工呼吸器、経管栄養といった延命処置を望まない」と回答し、代わりに苦痛を和らげる緩和ケアを選んだのです。

しかも、安楽死や医師による自殺幇助(ほうじょ)が法的に認められている国では、そうした選択肢を「良い」と評価する割合が高く、法律や社会環境が医師の死生観にも影響を与えていることが浮き彫りになりました。

日本の近隣諸国でも「患者の自己決定権」が認められつつあります。

韓国では2009年、植物状態となった患者の延命治療の中止をめぐる裁判で、最高裁が自己決定権を認め、その後2018年には延命医療決定法(終末期の患者の心肺蘇生や人工呼吸器装着などの中断を認める法律)が施行。

登録制の事前指示書は急速に広まり、わずか7年で登録者数は300万人に達し、成人人口の6.8%が自らの意思を記録するようになりました。

台湾でも2016年に患者自主権利法が成立し、アジアで初めて包括的に尊厳死の法制度を整えました。2019年の施行後、数万人単位が事前指示を登録していると報道されています。

欧州ではさらに踏み込んだ制度が存在しています。

2002年に世界で初めて安楽死を合法化したオランダでは、2024年には1万件近くの安楽死が実施され、全死亡の約5.8%を占めるほど増加傾向を示しました。ベルギーでも、2023年に全死亡の約3.1%が安楽死によるものでした。

フランスやドイツでは事前指示書に法的効力があり、医師は患者の意思を尊重しなければなりません。アメリカでは全50州で何らかの形の事前指示書に法的効力があり、在宅死の割合も約30%に達しています。

一方、日本ではどうでしょうか。

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