「断熱材に隙間…」「なぜ、わが家は暑いの…?」 猛烈な残暑《涼しい家と暑い家》の差、熱中症搬送の約4割が"住居"

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要因3. 維持管理

住宅は、新築時のままの姿をとどめ続けるわけではない。時間の経過とともに劣化や変化が生じ、定期的な点検や補修を重ねてこそ、快適さや安全性を保ち続けることができる。建材や設備が劣化していくように、壁の中の状態も経年によって変わっていく。

いくら高断熱の住宅であっても、断熱材自体が冷たくなって建物を冷やしてくれるわけではないため、家を涼しくするには冷房などの空調設備の使用が欠かせない。近年は光熱費をはじめあらゆるモノの値段が上がっていることもあって、冷房の使用を控えることもあるかもしれないが、熱中症を防ぐには適切に冷房を使うことが大切だ。

しかし、冷房の使い方によっては壁の中で結露を起こしてしまう要因になりかねない。たとえば、設定温度が低すぎれば壁の中と室内の温度差で壁内に結露が発生しやすくなる。同様に、壁や天井に直接冷気が当たり続けることで壁内結露が発生することもある。結露は、カビの繁殖などの原因となり、放置すると健康被害や住宅の劣化につながるため注意が必要だ。

断熱欠陥の広がりの「サイン」

壁を破壊しない限り壁の中を見ることはできないが、断熱欠損の広がりが「サイン」として表れることもある。

たとえば、壁紙のシミや剥がれ、カビの繁殖などがこれにあたる。サインが表れる頃にはすでに壁内の状態が悪化しており、断熱性能の低下だけでなく、カビやダニの繁殖によってアレルギーや呼吸器疾患といった症状を悪化させることにもなりかねない。

ホームインスペクションにおける天井裏や床下のチェック、あるいはサーモグラフィカメラによる壁表層部の温度変化の調査などによって断熱材の状態を確認することもできるため、新築時に加え、中古住宅の購入時や自宅の劣化診断を目的に活用を検討してみるのも良いだろう。

断熱性能は、快適性のみならず、毎月の光熱費や住宅の資産性にも大きく影響する。建物に求められる設計上の基準はどんどん高くなっている一方で、施工品質や暮らし方によって想定していた断熱性能が発揮できないこともある。

「机上」の性能だけではなく「実態」を見極めることが、夏は涼しく、冬は暖かく、快適に暮らすための重要な視点だ。

友田 雄俊 ホームインスペクター、さくら事務所 執行役員CCO

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ともだ かずとし / Kazutoshi Tomoda

大手リフォーム会社にて木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。2019年に株式会社さくら事務所に参画し、建物の施工中や完成後の状況を検査・調査するホームインスペクターとして活躍。住宅トラブルに関する相談対応実績は1,000件以上。2025年にさくら事務所・執行役員CCOに就任。自身が取材協力した「マンションバブル41の落とし穴」(小学館)が発売中。さくら事務所公式HPはこちら

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