週刊東洋経済 最新号を読む(5/16号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #ウクライナ侵攻、危機の本質

中国はロシアへの軍事支援を拡大する/習近平はウクライナ戦争長期化へ戦略を転換、もはや中国の同意なしで和平を選択できないプーチン

7分で読める
  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

この関連で筆者が想起することがある。1986年に旧ソ連と中距離核戦力(INF)全廃条約の締結交渉を進めていたアメリカに対し、当時の中曽根康弘首相がひそかに行った対ソ交渉方針修正提案だ。

2018年の外交文書公開で明らかになった主な経緯は以下の通りだ。

交渉の過程でソ連側は欧州部でのINFの全廃に前向きな姿勢を示したが、アジア部での削減や撤去を拒んだ。これではアジアが核軍縮の歴史的流れから取り残されると危機感を抱いた中曽根氏は、レーガン米大統領に書簡を送り、交渉方針の変更を求めた。これが「欧州ゼロ・アジア50%」という米方針の撤回をもたらし、最終的に史上初めて核兵器を削減することになった1987年のINF全廃条約の実現につながった。

求められるビジョンに基づく日本の積極外交

つまり、所詮は欧州の問題と片付けられかねなかった当時の核軍縮交渉を、日本が関与してアジアに引き付け、世界規模での核軍縮の枠組みを実現したのだ。広い国際的ビジョンに基づいた中曽根氏のこうした積極的外交の再現こそ今、日本外交に求められている。

ウクライナ情勢をめぐる最近の日本外交の不活性化を見るにつけ、筆者はこの思いに強く駆られる。本来であれば、実効的で持続性のある和平を実現するために日本は、結果優先で強引な仲介を進めるトランプ政権よりも、ウクライナに寄り添う立場を取る欧州との連携を図るべきだと筆者は考える。

これこそ、ビジョンに基づいた積極外交の再現である。しかし石破茂政権としては、トランプ政権との関税交渉に悪影響をもたらしてはならないとの懸念から、ウクライナ情勢をめぐり、アメリカと距離を取る立場は公然と取りにくいという事情があるようだ。非常に残念だ。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象