《万博》唯一の個人店が挑んだ「冷凍だらけ」の現実 生食材からの完全手作りで、1日7回転の大繁盛とんかつ店を生んだ"執念"の舞台裏

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この「巻き込み力」の正体を問うと、野口さんは「大きな組織に個人で挑む姿勢に共感してもらえたのでは」と自信なさげに答えた。

彼はこれまで、「万博に個人が出店するなんて聞いたこともない」「なんで個人でやるの?」と言われ続けている。ほぼ全員から反対されてきた。

それでも挑戦を続ける姿勢は、周囲の心を揺さぶるものがあったのではないか。しかも、酒井さん、清水さんと一点突破で訴えるため、「自分が協力しなくては」と協力せざるをえなかったのではないかと。野口さんの作戦勝ちだったのかもしれない。

「一個人が8人集まった力で万博でお店ができたことが、僕は面白いと思う。普通は絶対無理ですよね。次にもし万博のようなイベントがあれば、もっといいものができると確信しています」

とんかつ乃ぐち
野口さんは控えめで、常に口元に微笑を浮かべている。けれど、その内側には強大な「巻き込み力」と反骨精神が秘められている(筆者撮影)

「ストーリー性」も演出していた

ここまで野口さんの話を聞いていて、筆者が1つ気になったことがある。穿った見方かもしれないが、あまりに「できすぎたストーリー」であることだ。「借金を抱えて、家賃2万円の“おんぼろアパート”で店を開店、そこから個人店として唯一万博へ挑戦」って、そのままドラマになりそうな話だ。

とんかつ乃ぐち
「お化け屋敷」と呼ばれた“おんぼろアパート”で営業していた中津の店(写真提供:とんかつ乃ぐち)

だから、「もしかしたら、誰かがマーケティングを意識して裏で絵を描いていたのでは?」という考えが頭をかすめた。失礼を承知ながら聞いたところ、「テレビで取り上げられそうな、ドラマチックな面白いストーリーを描くことはイメージしていました」と野口さんはあっさり認めた。ピンチの連続のなかでそんな計算もあったとは。驚いた。

今回『とんかつ乃ぐち』を取材をしようと決めた筆者自身、野口さんの戦略にまんまと乗せられた一人かもしれない。

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