《万博》唯一の個人店が挑んだ「冷凍だらけ」の現実 生食材からの完全手作りで、1日7回転の大繁盛とんかつ店を生んだ"執念"の舞台裏

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個人店として前例のない挑戦だったが、プロの知見を借りることで、4000万円という巨額の資金調達を実現したのだ。

「支援していただける方が増えることで熱量も上がり、自分たちも実感が湧いてきました」

とんかつ乃ぐち 酒井裕二
食材調達や資金調達の交渉を担当した、経営コンサルタントの酒井裕二さん(写真提供:とんかつ乃ぐち)

3.物流と鮮度の壁

3つめの壁、第1の「仕入れ」と共に問題となったのが物流だ。豚肉はすべて冷蔵で入荷することになったが、たとえ熟成肉でも鮮度が命。できれば、精肉したものをその日に届けてほしかった。

しかし、万博への配送は専用の集荷場を経由するため、通常の配送+1日以上かかる。日時指定もできない。

そこで野口さんは、クール宅急便などでまずは大阪中央卸売市場に豚肉を送ってもらい、そこからチャーター便で、購入する野菜と一緒に届けてもらうルートを確保する。万博は、深夜や明け方は関係車両が入ることができるため、それが最も早い手段だった。

とんかつ乃ぐち
大阪中央卸売市場から届く、新鮮な野菜と豚肉をたっぷり使った赤味噌の豚汁(筆者撮影)

『ONE PIECE』方式で「最強チーム」を結成

万博開幕前に、次々に降りかかった課題。乗り越えられた理由を野口さんは、「仲間をつくり、適材適所の役割分担ができたから」とみている。一人では、絶対にできなかった。

「僕は料理しかしたことがないし、する気がありません。万博に限らず個人店舗で競合、企業と立ち向かおうと思ったら、『味』で一点集中突破を狙わないと太刀打ちできないからです。少なくとも、企業が経営する飲食店の『3倍以上』のおいしさと熱量じゃないと勝てないんじゃないでしょうか」

それを知っていたからこそ野口さんは、「自分が今まで知り合った人のなかで、どういうチームを組んだらいいか」をイメージして、万博が決まるずっと前から「絶対に出るから一緒にやろう」と声をかけはじめていた。「詐欺みたいな話ですよね」と自嘲気味に笑う。

「漫画の『ワンピース』のイメージでした。主人公のルフィが仲間を一人ずつ着実に増やしていくみたいに、お金はないけどもう一人ぐらいだったら売り上げでなんとかカバーできるから、料理人は清水研羊くん。もう一人いけるなら、頭脳になってくれる酒井さん、というふうに」

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