《万博》唯一の個人店が挑んだ「冷凍だらけ」の現実 生食材からの完全手作りで、1日7回転の大繁盛とんかつ店を生んだ"執念"の舞台裏
清水研羊さんは元々、中津の店に通っていた和食の料理人だ。酒井さんは、イタリアン時代から知り合いだった経営コンサルタント。実力はよく知っており、「最低でも2人が入ってくれれば、出ることができる」と考えていた。

営業がはじまれば、そこは自分たちのテリトリー。いかようにもお客様を喜ばせることができる。その自信と、やりきる覚悟はあった。
その後、デザイン、広告、Web、人事、器を担当する5人が加わり、8人でチームを結成。国際万博という巨大な舞台に、ギリギリの少数精鋭で挑んだ。
「なんとなく」から生まれた絆
でもなぜ、みんな仲間になってくれたのだろう。酒井さんは最初、「なんとなく」手伝いはじめたが、責任感から続けるうちに、野口さんの「生食材から手作りする、料理の原点を大切にしている姿勢」に共感する思いが湧いてきたという。
さらに銀行での融資交渉の場で「僕がマネジメントを見ます」と言ってしまい、引き返せなくなった。
料理人の清水さんは、以前から何度も野口さんから『一緒にやろう』と誘われていて、「世界中の人が集まる場所で料理するなんて、面白そうだな」と漠然と思っていたという。
「実際に決まって驚きましたが、誘われたときに『わかった』と言っていたので、参加することにしたんです」
2人とも、最初から「かなり乗り気」というよりは、野口さんの「巻き込み力」ともいうべき力で、「気づいたらチームに入っていた」状態だったようだ。その力は、ほかでも発揮されている。
『とんかつ乃ぐち』の出店資金は4000万円ちょっとだが、同じ「EARTH TABLE〜未来食堂〜」に出店している店に比べると、約半額だそうだ。工務店も巻き込まれ、「協力せざるをえなくなって」低価格で進められるよう工夫してくれたのだ。

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