《万博》唯一の個人店が挑んだ「冷凍だらけ」の現実 生食材からの完全手作りで、1日7回転の大繁盛とんかつ店を生んだ"執念"の舞台裏

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とんかつ乃ぐち
前菜の一例。グラスは、冷製とうもろこしのすり流しをベースにした「和風コーンポタージュ」。皿は、鰹出汁に薄口醤油と味醂で味付けした「冷やしフルーツトマト」と、生胡椒と醤油漬けした「鱧のバターソテー」、夏大根の柚子味噌田楽(写真提供:とんかつ乃ぐち)
とんかつ乃ぐち
1つずつ、肉それぞれの個性を引き出す丁寧な仕込みが行われる。早朝からはじまり、カットだけで5時間に及ぶことも(写真提供:とんかつ乃ぐち)

「国内店の99%が冷凍食材」の衝撃

冒頭に書いた通り他の日本の飲食店を見て回ると、自分たちのような生や冷蔵食材からの完全手作りは、極めて少数派だったのだ。

野口さんが経験したのと同じように、調達先の認証の問題などが影響したのかもしれない。

前編でも触れたが、野口さんはミラノ万博で、大行列を前に、ニョッキを1個1個手作りしている料理人の姿を見た。「自分も日本料理を文化として発信する一員になりたい」と憧れ、万博出店を目標としてきたのだ。それなのに――。

「これでは、日本の食文化の魅力を十分に発信できているとは言えないのでは。世界一高い調理技術を持っている日本なら、新鮮な食材を使った手作りの素晴らしさをもっと伝えられるはずなのに……」

とんかつ乃ぐち
山形県にある平田牧場の銘柄豚『バークシャー50』のシャトーブリアン。ほどけるようなやわらかさと上品な旨味は、牛ステーキを凌駕するおいしさ(筆者撮影)

大きなショックを受けた野口さんだが、「だからこそ、自分がしっかりやっていかなあかん。さまざまなジャンルの料理人たちともコラボレーションして、『大阪の料理人』ブランドを発信していくんや」と気を取り直した。全部冷凍食材ではない、自分たちが風穴を開ける存在になるのだと腹をくくった。

2.4000万円の資金の壁

2つめの壁は、資金調達だ。

当初、野口さんが作成した事業計画書では、「個人店での万博出店は前例がない」と銀行から門前払いされた。そこで、経営コンサルタントの酒井さんが事業計画書を作り直すと、必要な融資が受けられるように。その後、親戚からの融資も受けられ、クラウドファンディングで200万円の調達にも成功した。

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