《万博》唯一の個人店が挑んだ「冷凍だらけ」の現実 生食材からの完全手作りで、1日7回転の大繁盛とんかつ店を生んだ"執念"の舞台裏

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「根底には『とんかつ好きやったら絶対わかるはずや』という確信がありました。とんかつを食べ歩いた人であればあるほど、絶対わかるはずだ、と。そこだけはゆるぎませんでした」

とんかつ乃ぐち
目指すのは、「思わず天を仰いでしまうおいしさ」。同じ肉を同じ調理法で揚げても、毎回イメージ通りの味にはならないのがとんかつの難しさだ(写真提供:とんかつ乃ぐち)

人間ってどこで感動するかわからない

野口さんが「料理で世界に出たい」と思い始めたのは高校を卒業してイタリア料理店で働くようになってからだ。21歳のとき、アメリカ、カナダ、メキシコをバックパックで周遊したのだが、グランドキャニオンの風景に既視感を覚え、まったく感動できなかったそうだ。

しかし、まったく知らなかった「クレイジーホース」という彫刻に感動した。最後までアメリカ政府に抵抗したインディアン部族・ラコタ・スー族の長の像である。突然の登場と、あまりの巨大さに心が震えた。そのとき、「知らないものに突然出会ったときこそ、人は強く心を揺さぶられる」と学んだそうだ。そして、「その感動を料理に凝縮して提供したい」と考えるように。だからこそ、コース料理にこだわっている。

「人間ってどこで感動するかわからない。意外なところで感動するから、いろいろ提供して、ひとつでも感動を一緒に体験できたらと」

10カ年計画は、まだ始まったばかり。次は東京、そしてロンドンへ。挑戦は続く。

とんかつ乃ぐち
「自分はアスリートに近いのかもしれない」と野口さん。「プロのアスリートは故障しても、そこから『身体にどんな負担がかかっているか』を考え、練習しながら身体の癖を補正し治します。僕も何度も腱鞘炎になっていますが、『腕に負担がかからないよう、効率よく料理するにはどうしたらいいか』を考え、料理しながら治しています」(筆者撮影)
とんかつ乃ぐち
テイクアウトメニューとして人気のカツサンド2800円(写真提供:とんかつ乃ぐち)
前編:元イタリアンシェフ「コロナ禍で1500万借金」から《万博出店》へ。「家賃2万円」おんぼろとんかつ店が月商2700万円に急成長した「振り幅戦略」
【画像を見る】本編で紹介しきれなかった画像も!低温調理法で揚げたとんかつに万博出店の様子はこんな感じ
笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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