元イタリアンシェフ「コロナ禍で1500万借金」から《万博出店》へ。「家賃2万円」おんぼろとんかつ店が月商2700万円に急成長した「振り幅戦略」

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当時は、コロナ禍で緊急事態宣言が出ていた時期だ。共にレストランで働いていた妻も失業し、高校を卒業した息子も、大学に進学せず家にいた。つまり、家族3人全員が無職状態になったのだ。「どうする、どうする」と慌てたという。

1500万円は、利子だけでもすごい金額だ。自己破産をするか、3人で働いて返すか――。家族会議をしたところ息子が、「自己破産するにしても、最後に“自分が本当に好きな店”にチャレンジしてみたら。せっかく今までやってきたんだから。僕も応援するよ」と背中を押してくれた。

「そう言われたら、やるしかないじゃないですか」と照れくさそうに野口さん。そこで浮上した案が、とんかつのフルコースを提供する店だった。

銘柄豚のラインナップ
コースのスタート前、色鮮やかな生の状態で当日の銘柄豚のラインナップが披露される(筆者撮影)

再起をかけて「とんかつコース」を

実は野口さんは前々から、とんかつを「コースで提供できる料理」だと思っていたそうだ。

理由の1つは、日本には串揚げと天ぷらがあり、「揚げたてを1つずつ食べる」習慣があるからだ。もう1つは、焼鳥の存在である。焼鳥には、「部位ごとに」提供する文化がある。ならば、串揚げや天ぷらの習慣と焼鳥の文化を合体させれば、「とんかつコース」ができる。そう考えたのだ。

また、数は少ないが、東京で2~3種の銘柄豚と部位を組み合わせてコース提供しているモデルケースもあった。そして何より野口さんの料理の原体験が「コース料理」だったこともある。

加えて、「イタリアンにルーツを持つ自分なら、とんかつの新境地を切り開けるのではないか」と思ったそうだ。

とんかつに合わせる調味料
とんかつに合わせる調味料として、クリスマス塩、豚肉から煮出した旨味の濃い自家製ソース、たまり醤油、和からしが用意されている(筆者撮影)
「とんかつ乃ぐち」のとんかつ
「素材を揚げ油に漬けて、短時間で仕上げる」日本の揚げものはディープフライと呼ばれ、このような料理法は海外にはほとんどない。イタリアンで修業を重ねた野口さんだからこそ、その「ユニーク性」を感じたという(写真提供:とんかつ乃ぐち)
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